旧暦5月30日


日めくりカレンダーのイラスト

「旧暦には5月30日がない」という不思議なことがあります。太陰太陽暦の仕組みと日付の消失について、学んでみましょう。
私たちが普段使っているカレンダー、すなわちグレゴリオ暦(新暦)では、1年は365日(うるう年は366日)で構成され、1か月は30日または31日(2月は28日または29日)と決まっています。しかし、日本で明治5年まで使われていた旧暦では、この日数の構成が大きく異なります。その結果、旧暦の中には「存在しない日付」というものが生じることがあり、たとえば「旧暦5月30日」は、多くの年で存在しません。これはなぜなのでしょうか。
旧暦とは、「太陰太陽暦」と呼ばれる暦法に基づいています。太陽の動き(季節の変化)と月の満ち欠け(朔望)を両方考慮するもので、約29.5日を1か月として月の満ち欠けに合わせて月初を決めます。月の初日は「朔(さく)」と呼ばれ、新月の日がそれに該当します。したがって、1か月の日数は「29日」または「30日」となり、平均して約29.5日です。これは太陰暦の基本的な特徴です。ここで問題になるのが「月の長さ」です。1か月が常に30日あるわけではなく、29日(小の月)と30日(大の月)が交互に現れます。そのため、旧暦では「30日」が存在しない月がしばしばあり、特に「5月30日」は、毎年あるとは限らない、むしろ多くの年で存在しないのです。実際、旧暦の暦表を確認してみると、5月が29日で終わっている年がかなりの割合を占めています。たとえば、天保年間や文久年間の暦を見ると、「5月29日」の次の日は「6月1日」になっており、「5月30日」がありません。これは、朔望に基づいて月初を設定しているため、自然現象に即した暦であることに由来します。したがって、旧暦では「日付が飛ぶ」「日付が欠ける」ということが当たり前に起こりうるのです。
こうした日付の欠落は、現代人にとっては違和感を覚える現象かもしれませんが、旧暦を使っていた人々にとっては日常の一部でした。旧暦のカレンダーには、あらかじめその年の月ごとの日数が記されており、人々はそれに従って生活していました。もちろん、行事や記念日などもそれに合わせて動かしていましたので、「◯月◯日」という表現は、新暦とは別のリズムで動いていたことになります。さらに、旧暦には「うるう月」という概念もあります。これは、太陰暦だけでは季節と月のズレが生じてしまうため、約3年に1度、同じ月をもう一度挿入して調整するものです。たとえば「閏5月」「閏7月」などが存在することがあります。ところが、この「閏月」であっても、必ず30日あるわけではなく、やはり29日で終わることもあります。ですから、「うるう月があるからといって、5月30日が必ず登場するとは限らない」のです。このように見てくると、「旧暦には5月30日がない」というのは、特殊な現象ではなく、旧暦という自然のリズムに基づいた暦法からくる必然的な結果であることがわかります。現代においても、季節の移ろいを表す、二十四節気や七十二候は旧暦に基づいており、梅雨入りや彼岸、節分など、日々の暮らしの節目としてニュースになっています。

2025年6月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  

コメントを残す