Big Sur(ビッグサー)

カリフォルニア州中部海岸に位置する Big Sur は、「世界で最も美しい海岸線の一つ」と称される場所です。切り立った断崖と太平洋の青、霧に包まれる針葉樹林、そして人の営みを超えたような静寂が広がるこの地域は、多くの芸術家や旅人を魅了してきました。ロサンゼルスとサンフランシスコを結ぶ海岸道路 California State Route 1 (101)を走ると、その景観はまるで映画のワンシーンのように次々と姿を変えていきます。
Big Surという名は、スペイン植民地時代の表現「el país grande del sur(南の大きな土地)」に由来するといわれています。かつてスペイン人たちは、現在の Monterey の南側に広がる未開の山岳海岸地帯をそう呼びました。この地は長く人の往来が難しく、険しい山々と海に隔てられていたため、20世紀初頭までは半ば孤立した地域だったのです。Big Sur の魅力を語るうえで欠かせないのが、有名なのが 101に架かるBixby Creek Bridge でしょう。1932年に完成したこの優美なアーチ橋は、深い渓谷に架かる姿があまりにも印象的で、数多くの映画やCMにも登場しています。橋の上から見下ろす太平洋は、晴れた日には濃紺に輝き、霧の日には幻想的な銀色へと変わります。Big Sur の風景は、単なる「絶景」という言葉では表しきれません。そこには自然が持つ畏怖と静寂が同時に存在しているのです。この地域には古代から先住民エッセレン族が暮らしていました。彼らは山と海を神聖な存在として敬い、自然と共生する生活を送っていたとされています。しかし18世紀後半、スペインのミッション政策によって生活は大きく変化しました。近郊には Mission San Carlos Borromeo de Carmelo が築かれ、先住民たちはキリスト教化と労働制度の中へ組み込まれていきます。Big Sur の雄大な自然の背後には、歴史の影も静かに横たわっているのです。
20世紀になると、Big Sur は芸術家や思想家たちの隠遁地として知られるようになります。作家 Henry Miller はこの地を深く愛し、1940年代から1960年代にかけて滞在しました。彼は Big Sur を「アメリカの魂がまだ生きている場所」と表現しています。また、詩人や画家、音楽家たちもこの地に惹かれ、都会文明から距離を置きながら創作活動を行いました。現在でも Big Sur 一帯には、小規模なギャラリーや自然派コミュニティが点在しています。さらに、Big Sur は精神文化とも縁の深い土地です。特に有名なのが Esalen Institute です。1960年代に設立されたこの研究施設では、心理学、東洋思想、瞑想、人間性回復運動などが探求され、多くの知識人が集いました。海を望む断崖の温泉は現在も有名で、「自己を見つめ直す場所」として世界中から人々が訪れています。Big Sur が単なる観光地ではなく、「心の巡礼地」のように語られる理由の一つでしょう。
春には野花が咲き乱れ、海にはラッコやアシカ、時にはクジラの姿も見られます。内陸部にはレッドウッドの森が広がり、数百年を超える巨木が静かに立ち続けています。中でも Julia Pfeiffer Burns State Park にあるマクウェイ滝は断崖から直接海へ落ちる珍しい滝として知られています。
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