涅槃会



新暦3月17日は旧暦如月15日で涅槃会(ねはんえ)にあたります。本来は旧暦なのですが、多くのお寺では新歴の3月15日に行っているようです。今年は偶然、この日が仏滅になっており、何となく因縁を感じます。涅槃会といっても馴染みのない人も多いと思いますが、お釈迦様がお亡くなりになった日でこれを入滅(にゅうめつ)といい、ひらたくいえばお釈迦様の命日です。涅槃の原語はニルヴァーナで涅槃はその漢訳です。そもそもの意味は迷いがなくなった境地のことをさすのですが、釈尊の入滅をさすことになっています。実際の入滅日は不明らしいのですが検索サイトによれば「南伝仏教ではヴァイシャーカ月の満月の日(ウェーサーカ祭)と定められている。ヴァイシャーカ月が、インドの暦では第2の月であることから、中国で2月15日と定めたものである。」だそうです。そもそも如月15日も根拠は不明なのですね。なので新暦で法会を営んでも問題はないのでしょう。同じく「法要中は、釈迦が娑羅双樹の下で涅槃に入った際の、頭を北にして西を向き右脇を下にした姿で臥し、周囲に十大弟子を始め諸菩薩、天部や獣畜、虫類などまでが嘆き悲しむさまを描いた仏涅槃図(涅槃図)を掲げ、『仏遺教経』を読誦することとなっている。」のだそうで、この涅槃図はあちこちの寺にあるのでご覧になったことがあるかもしれません。あるいはアジアの国々にある寝姿の釈迦像がこれです。頭を北にする(北枕)のを禁忌とする習慣はここからきています。

涅槃について少しだけ詳しく説明すると、お釈迦様はすでに35歳で悟りを開いておられ、それを偲ぶのが成道会(じょうどうえ)であり12月8日です。そして80歳になられた時にお亡くなりになり肉体的な苦からも解放されて涅槃に至ったということです。お亡くなりになる時の様子を描いたのが涅槃経です。お釈迦様は最後の旅で寄った町で供養として出された豚肉(あるいはキノコ)料理を召し上がって食中毒になりました。食べる前にすでにおわかりになっていたようで、弟子たちには食べないように、私が食べた後はすべて捨てなさい、とお命じになったそうです。現在でも僧は托鉢していただいた供物を捨てることはありません。そしてお釈迦様は差し出した人を責めないように功徳をほめたたえ、次の町へと衰弱した身を押して旅立たれました。そしてそこで弟子に命じて沙羅双樹の下に寝床をしつらえさせ、そこに横たわって入滅されたのです。弟子に「泣いてはいけない、嘆いてはいけない。私は説いてきたではないか。愛するものとはいつかは別れる、生まれたものはやがて滅する」と言われて弟子の献身的な帰依とその徳を讃えました。そして「修行者たちよ、すべては過ぎゆく。怠ることなく修行を続け、完成させよ」との言葉を最後に、静かに入滅し、涅槃に入ったと経典は伝えています。これが諸行無常の原点です。
こうした法話が涅槃図と共に説明されます。寺によって多少の違いはあると思いますが、内容は同じことを説いています。涅槃会については多くのサイトがありますので、実際にお寺に行けない方もぜひ一度ご覧になってみてください。仏教の本質がわかるのではないかと思います。ちなみにお釈迦様の誕生日の灌仏会(かんぶつえ)、成道会と涅槃会が三大法会となっています。仏教が盛んであった昔は各寺で盛大な法会が営まれていました。とくに疫病が流行ったり、日照りや戦、震災など社会不安が大きい歳は人々は祈りを捧げてきました。

この数年の社会不安の時は昔を偲んで法会に参加してみるのもよいのではないでしょうか。どこのお寺でも仏教徒でなくても檀家でなくても、寛容に受け入れてくださると思います。これは本来は宗教行事なのですが、平安時代から続く日本の習俗でもあり、欧米のクリスマスやイースターと同じく、意味を考えることも大切ですが、伝統を偲ぶことの大切さを学ぶ意味もあります。

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