ワンマン
最近は「ワンマン」という表現をあまり聞かなくなったような気がします。昔は「ワンマン社長」というのがよく聞かれました。良い意味でも悪い意味でも、独裁的な経営者のことでした。ワンマンはone manですから、元は「一人」という意味ですから、ワンマンバスとかワンマンショーのような使われ方が本来的な表現です。ワンマンバスというのは、昔のバスは運転手さんの他に車掌さんが乗車していて、切符を切ったり、ドアの開け閉めなどをしていました。女性が多かったため、バスガールという名称もあり、「東京のバスガール」という歌があったくらい、女性の憧れの職業でもありました。今は観光バスに女性ガイドが乗車しているのが、その名残かもしれません。
今でも列車には車掌さんが乗車していますが、昔は市電など、公共交通機関は複数常務が常識でした。しかし人件費の削減やら、電子機器の発達により、車掌さんが乗車しないことが当たり前になってきて、ワンマンバスという表現も消えていきました。ワンマンショーは単独ライブ公演のことですが、落語などでは独演会という言い方をしています。一人で長時間の公演をするのは大変ですが、ファンにとってはありがたい時間でもあります。ワンマンショーといっても、楽団もいれば、舞台監督や照明や音響のスタッフもいるので、一人で全部やっているのはストリート・ミュージシャンくらいでしょう。ここでいうワンマンはショーをする演者だけのことを指しています。最近はショーも複数でするのが増えて、中には大勢の団体のこともあり、テレビにでてくるグループは次々に栄枯盛衰があって、誰が誰だかわからないうちに消滅してしまうこともあります。最近は「推し」というグループの中の特定の人のファンになることが流行っていて、それなりにショーとして成立しているそうですが、皮肉な言い方をすると、一人では成立しないので、大勢で出ることで成立させているのですから、それだけ芸も薄いということにもなります。最近の学芸会でも「全員が主役」という演出が流行りだそうですから、「みんなで作り上げていく」という舞台感覚が減っているのかもしれません。ワンマンショーのように一人のスターを裏方が支えるという構図は廃れているようで、同じことはワンマン経営にもいえそうです。ワンマン経営には短所も長所もありますが、カリスマが減っているのもそれが原因かもしれません。
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