商品としての言語4 商品化された宗教
宗教と商品化は無縁のようなイメージですが、実際に日本の神社やお寺にいくと、たくさんの商品に出会います。御祈祷料やお布施は宗教行事の謝礼ですから、商品ではなく、実際に課税対象ではありません。しかし、お守りやキーホルダー、お線香などは値段がついており、販売されているので商品です。最近流行のご朱印帳は商品なのか、宗教物なのか、境界が曖昧です。さらに神社やお寺には門前町があり、そこではお土産や食べ物が普通に売られていますし、神社やお寺という宗教法人ではなく、商店が販売しているのですから、完全に商品です。これは日本だけの特徴ではなく、海外の教会やお寺でも、お土産店があって、ロザリオとか、絵葉書、ろうそく、フィギュアなどを売っていますし、商品です。日本人があまり宗教と考えないのが、占いです。干支の商品や星座の商品が数多く売られています。トランプやタロットカードは占いにも用いるので、宗教関連商品といえそうですが、タロットカードは占い専用なのに対し、トランプは遊びにも使うので、商品であることは間違いないのですが、宗教関連かどうかの判断は微妙です。そもそも宗教と習俗の境界は曖昧で、正月やお盆の飾り、節句の飾り、二十四節気の飾りなどは必ずしも宗教とは言い切れない側面があります。大晦日とお盆は仏教、正月は神道の行事であることが一般的な理解ですが、宗教として認識されているか、というと微妙です。しかし初詣に行けばお賽銭をあげて、手を合わせて、願い事をする、という行為は日常生活とはいいがたく、外国人から見れば、宗教行為と映ると思われます。初詣に限らず、神社仏閣への参詣は宗教的行為であり、実際、宗派によっては、そうした行為を禁じている場合もあります。また神社の祭りにも同じような行動がみられます。本人の自覚をもって宗教と生活習慣を分けるというのであれば、イスラム教徒にとっては、日々の礼拝は生活の一部ですが、異教徒には宗教そのものと映ります。そして結婚や葬儀というのは明確な宗教行為なのですが、日本人はいつからかキリスト教的な結婚式を上げたり、「無宗教」の葬儀をする人が増えてきていて、諸外国からは「理解しがたい」人々と指摘する人も多いです。あるいは、そうした「宗教的寛容」の日本の宗教は「日本教」と分析する学者もいます。また、日本の宗教は神道も仏教もアニミズムのような形に変容していることが特徴的、という指摘もあります。こうした日本の宗教的風土が、宗教的物品の商品化についても「緩い」認識の基盤であることが考えられます。ということは商品化という概念も文化的背景がある、という例になります。つまり商品というのは、一般に考えられるような経済的概念ではなく、文化的概念であることが考えられます。日本では商品とはお店に並んでいるモノと理解されていますが、英語のcommodityの語源は「快適さ、利便性」という意味のフランス語の“commodité”から来ています。モノというより、便利にしてくれること、というのが語源で、それを特定の意味にしたのが経済学です。マルクスの貢献が大きいのですが、それはまた後日。
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