トランプ
今やトランプといえば、次期米国大統領候補ですが、日本ではカードゲームもトランプといいます。英語のtrumpは同じ単語で「切り札」という意味です。カードゲームの方はplaying cardsといいます。単にcardという場合もあります。彼の名前がトランプ(切り札)であることも米国人には心理的な影響があります。「ここぞ」という時に切って勝利を得るのが切り札ですから、インフレや経済不況で庶民が苦しんでいる時の救世主として期待するようなニュアンスがあります。
一方でポリコレといわれるpolitical correctnessは民主党のスローガンであり、「政治的妥当性」のことで、人種、性別、年齢、宗教、国籍、障害などにより差別されないという信条のことを指します。理想的な理念なので、日本は今、こういう理念に従おうという雰囲気が蔓延しています。それでポリコレとして揶揄されることが多いのです。アメリカという国は実際には、こうした差別が蔓延していて、政治的に解決することが強く求められているという国情を理解する必要があります。こうした理念は崇高なのですが、直接的な生産性はなく予算を消費するので、「大きな政府」が必要になります。一方で、経済を優先すると、国家予算は縮小方向になるので「小さな政府」となります。結果的に、大きな政府には増税が必要であり、小さな政府は減税という政策が中心になります。政府が国民から税金を集めて、差別のない国を目指して補助金などをバラまくのがよいか、税金を減らして自由にできるかわりに自己責任を強いるか、はどちらが正しいという結論はむずかしいです。そこでアメリカ国民は民主党の「大きな政府」か共和党の「小さな政府」かの選択を選挙で決める制度になっていて、それが二大政党制ということです。
その考えによれば、日本の現状は「大きな政府」となっており、国家予算も大きく、税金負担率も高い状態です。問題は「小さい政府」を目指す政党が対抗しておらず、国民には選択肢がないのが不幸です。日本の伝統は、政治は政府にお任せで、国民は政権選択の幅が狭いのです。首相という政府のかじ取りは国会が選出しますから、国民が選挙できません。この議院内閣制は英国をモデルとしたものですが、他にもドイツ、スウェーデン、オランダ、スペインなどがこの制度になっています。大統領制と議院内閣制のどちらがよいかは結論がありません。どちらにもメリットとデメリットがあります。イランのように大統領の上に宗教指導者がいる国もたくさんありますし、中国や北朝鮮のように選挙によらない主席が支配する国もあります。世界の多くは民主主義でもなく、ポリコレもない国が多いという現状を学ぶことが、異文化理解の第一歩でしょう。日本にはどちらもあることが幸せといえます。またどちらも完全でないことも事実です。しかし両極端なのも困ることが多いのです。かといって、日本的ないいとこ取り、ともいかないのが政治の世界です。なにしろ国家予算と税金が関わっているからです。時計の振り子が止まらないのと同じで左右に触れながら、時間が過ぎていくのでしょう。
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