身体の名前と起源



どの言語にも共通するのですが、身体の部位の名前つまり身体部位名称はその言語の基本語彙となっています。 日本語なら、目、耳、鼻、口、手、足、など数多くあります。漢字で書くと字源などが説明されますが、多くは形をとった形象という方法が多いです。ひらがなで音を書くと、メ、テ、のような一音の語、一音を重ねたミミのような語、ハナ、アシのように二音の語がほとんどだということがわかります。一音ということは、「最初にできた語ではないかな」という推測ができますね。ミミはそれが直接語源でなく、派生したという歴史があります。単音のミは語源としては水(ミズ)だったそうです。ミは水の他に水域の意味もあったそうで、そこから端という意味に広がり、繰り返すことで、「端っこ」という語になったそうです。耳は顔の端にあるから、耳なのです。そういえば食パンの茶色の焦げた部分を「パンの耳」といいますが、なぜだか不思議に思っている方が多いと思います。これで謎が解けたでしょうか。鼻は花と同じ音ですが、なぜでしょうか。それはどちらも「突き出ている」からだそうで、花は確かに枝の先についています。鼻と花だけでなく、日本語には目と芽、鼻と花、歯と葉、耳と実(み)、頬と穂(ほ)。顔の部位の名前と植物の部位の名前が、同じの音を持つ言葉で呼ばれているのは、偶然ではなく何か意味がありそうです。古代の日本人は顔の部位も植物の部位も同じように呼んで、同じようなものと考えていたとするのが自然でしょう。漢字は中華文明に接するようになってから、入ってきたものですから、漢字では別になっていたことを利用して、同じ音に別の漢字を当てはめることで区別するようになったと考えられます。同音異義語には偶然に同じになった語もありますが、多くは語源的に同じ概念であったと考えられます。顔の部位だけでなく、「からだ(体)」は、語源として幹をあらわす「から」に接尾語の「だ」がついたものだそうです。「から」が植物にも使われた例は、稲の茎の「稻幹(いながら)」、芋の茎の「芋幹(いもがら)」などの言葉に今も残っています。また、古くは手足のことを「枝(えだ)」と呼んでいたそうです。「手」「足」と呼び分けるようになったのは、奈良時代あたりからだそうです。今でも四肢(しし)というように肢と枝は同じシという音で、四肢に手も足も含まれています。「幹から出ている枝」とも連想できます。日本語は人と植物の関係は相当深く、人生でも「芽が出る」「花が咲く」「実になる」「枯れる」のような比喩が用いられます。このように身体部位はその言語の基本語彙である、という原理を応用して、いろいろな言語の基本語彙を比較して、その変化率から言語同士の親縁関係や歴史的変化を推定する学問領域があります。この親縁関係を語族といい、欧米の言語は印欧語族という1つの語族に属し、それらの共通祖先とされる祖語が古代インドにあると推定されています。日本語はどの語族に属するかは昔から議論がありますが、未だ結論がなく、日本語の起源は正確には不明です。その結果、日本人の起源も定説がなく、今も研究が盛んな分野です。

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