処暑
8月22日は二十四節気の処暑です。処暑の「処」には止まるという意味があり、暑さがおさまる頃を表わします。普通はお盆を過ぎると涼しくなってきます。夏の太陽の勢いもだんだん弱くなり、朝晩は過ごしやすくなる時期です。厳しい残暑が和らぎはじめ、朝夕は涼しい風も吹き、虫の音も聞こえてきます。過ごしやすくなるものの、台風到来の時期でもあるため、大雨や土砂崩れなどの自然災害には日頃から準備をしておくことが大切です。七十二候は次です。
初侯:綿柎開(わたのはなしべひらく)「柎(うてな、いかだ)」は花のガクのことです。綿を包むガクが開き始める頃で、綿の実がはじけて白いふわふわが顔をのぞかせます。綿は淡く黄色い花が咲き、ボールのようにふくらんだ白い実ができます。それを英語ではcotton ballsといいます。最近はそのかわいらしさから、園芸にしている人もいます。その実が熟してはじけると、種をくるんでいる白いふわふわができ、これが綿花で、この繊維を撚って糸を作り、それを織って木綿などを作ります。化学繊維が増えた今日でも綿の服はよく着られます。
次侯:天地始粛(てんちはじめてさむし) 10日も過ぎると暑さもようやく鎮まり始めます。「粛」には縮む、鎮まる、衰えるという意味があり、勢いよく燃え盛っていたような天地の暑さもようやく鎮まるという意味です。「粛清」は厳しく取り締まることで騒ぎを収めて、きれいにするという意味が原義です。
末侯:禾乃登(こくものすなわちみのる) 処暑の候も終わりになると、いよいよ稲が実り、穂を垂らす頃になります。最近は台風の前に収穫できるように早場米が増えていますが、早いものではお盆前に出てくるものもあります。「禾(のぎ、いね)」は稲穂が実った様子を表した象形文字です。「登」は実る、成熟するという意味があります。「実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな」は、学徳が深まるとかえって謙虚になることのたとえですが、七代目桂文楽の高座では、この諺と共に床に額がつくような低姿勢でお辞儀をされたのが印象的でした。この時期、京都などでは「地蔵盆」があります。地蔵盆は、地域を守り地獄の鬼から子どもを救う守り神であるお地蔵様を、子どもたちが供養する行事です。今はだいぶ廃れてきましたが、地域によっては残っているところもあります。この時期に「おわら風の盆」をはじめ、風を鎮める祭を行う地域もあります。鎌が風の力を衰えさせると信じられていたため、屋根の上や軒先に鎌を取り付けたり、竹竿の先に鎌を付けて立てたりする風習もあるそうです。処暑は台風が多く発生する時期なので、「二百十日(にひゃくとおか)」という雑節があります。この日は立春から数えて210日目で経験的に台風が来る確率が高いことを教えて警戒したのです。台風は農家だけでなく、漁師にとっても生死に関わる問題です。また「二百二十日(にひゃくはつか)」も同様の雑節で、旧暦8月1日の「八朔(はっさく)」、「二百十日」、「二百二十日」を農家の三大厄日としています。
行って収穫の無事を祈るようになりました。農作物を守るために風を鎮めるための風祭りが全国各地に残っていますが、とくに有名なのが富山の越中八尾「おわら風の盆」。独特の風情が人気を呼び、小説や歌(※)にも数多く登場しています。
※小説は高橋治『風の盆恋歌』、渡辺淳一『愛の流刑地』、内田康夫『風の盆幻想』など。歌は石川さゆり『風の盆恋歌』などが有名です。
また、越中八尾「おわら風の盆」は、富山市八尾町で行われる風祭り。風を鎮める豊年祈願と盆踊りが融合し、娯楽のひとつとして愛しまれてきたお祭りで、300年以上の歴史があります。
坂の町・八尾の古い街並みに哀愁をおびた胡弓の音色が響き、「越中おわら節」にのせて編み笠をかぶった男女が踊り歩きます。踊り手の多くは、この地に生まれて幼い頃から鍛錬してきた10代後半から20代半ばまでの男女で、休憩時間に編み笠を脱いで寛ぐ姿は現代っ子そのものですが、踊りだせば指先ひとつにまで神経が行き届いた素晴らしさ。誰もが楽しめる「豊年踊り」、優雅な「女踊り」、勇壮な「男踊り」があり、男女ペアで艶やかに踊ることもあります。
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