すずめ


コラム挿絵:雀のイラスト

春分の七十二候の初候は「雀始巣(すずめはじめてすくう)雀が巣を作り始める頃」となっています。雀は私たちの身近にいる小さな鳥でありながら、その生態や文化的な意義には多くの興味深い点があります。

雀はスズメ目スズメ科に属し、世界中に広く分布しています。特に都市部や農村部でよく見られ、人間の生活圏に適応していることが特徴です。雀の食性は雑食性で、主に種子や昆虫を食べます。農作物の害虫を食べるため、農業においては益鳥とされていますが、一方で穀物を食べることから害鳥と見なされることもあります。案山子(かかし)は稲作における雀よけでした。このように、雀は人間との関係が非常に密接であり、その存在は古くから人々の生活に影響を与えてきました。文化的な面でも、雀は多くの国で親しまれています。日本では、俳句や和歌に詠まれることが多く、その姿や鳴き声が季節の風物詩として描かれています。

雀に関する伝説や神話は、世界各地で見られます。日本では、雀は幸福や愛、幸運を象徴する鳥として知られています。例えば、「舌切り雀」という有名な民話があります。この物語では、優しいおばあさんが傷ついた雀を助け、その恩返しとして雀が宝物を持ってくるという話です。この物語は、善行が報われることを教える教訓として広く知られていますまた、中国では「雀の千里を飛ぶ」ということわざがあり、小さな体でありながらも大きなことを成し遂げる象徴とされています。

雀はヨーロッパの民話にも登場します。例えば、イギリスの民話では、雀は幸運の前兆とされ、家の中に雀が入ってくると、その家に幸運が訪れると信じられています。雀の社会構造も興味深いです。彼らは群れを作って生活し、互いにコミュニケーションを取り合います。特に繁殖期には、オスがメスに対して求愛のダンスを披露し、巣作りや子育てを共同で行います。このような行動は、雀が高度な社会性を持つことを示しています。春になると、オスは美しい羽を広げてメスにアピールし、巣作りのための材料を集めます。巣は木の枝や草、羽毛などで作られ、非常に精巧です。メスが卵を産むと、オスとメスは協力して卵を温め、ヒナが孵化すると共に餌を運びます。このような共同作業は、雀の家族愛と協力の精神を示しています。

さらに、雀は環境の変化に対する指標生物としても重要です。都市化や農薬の使用などにより、雀の数が減少している地域もあります。都市部ではビルの隙間や公園の木々に巣を作り、農村部では藁葺き屋根や農作物の間に巣を構えます。雀は人間の生活環境に巧みに適応し、共存してきました。冬の寒さを乗り切るために、群れで体を寄せ合って暖を取る姿は、彼らの社会性と適応力を象徴しています。雀の鳴き声もまた、彼らの魅力の一つです。「チュンチュン」という鳴き声は、多くの人々にとって親しみ深いものです。この鳴き声は、仲間同士のコミュニケーションや縄張りの主張、警戒のサインとして使われます。雀の鳴き声を聞くことで、彼らの生活の一端を垣間見ることができるでしょう。雀から学ぶことも多いのです。

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