手話の雑学4

あらためて、日本の手話と身振りを比較してみると、たとえば「自分」を表すために鼻を指差すのは日本独特の文化であり、外国では胸を指差す身振りなので、外国の身振りや手話では、鼻を指差すと「鼻」の意味にしかなりません。日本の手話学ではあまり知られていませんが、「手話には文化的な違いがあるという典型的な例」として、欧米の手話学では知られています。
また、手話の最初の方で習う<男>と<女>は日本では身振りと共通ですが、やはり外国の身振りや外国の手話とも違います。たとえば中国の手話では、親指を立てると<強い>、小指を立てると<弱い>の手話になります。ある意味、男女と強弱では、意味の類似性がありますが、それは中国文化と日本文化の類似性ということになるのかもしれません。アメリカ文化では、親指を立てるのは「good」の意味で、最近では日本の中にも浸透してきた「外来身振り」の1つです。そして、この身振りが、インターネットの世界で、「イイネ」のマークとして広がってきています。そして「good」の反対語の「bad」のサインは親指を下に向けます。日本では「no good」という英語としてとらえられることが多く、それがNGという略語となって広がってきています。このように近代日本語はアメリカ語の影響が強く、外来語として浸透してきています。英語が世界に与えている影響は、日本だけではありません。「OK」サインはほぼ世界に通じます。日本では「お金」のサインと同じなので、身振りを主体とした外国人とのコミュニケーションでは、いろいろ問題も起きていそうです。日本人が「お金」のつもりでしたのが、「OK」と取られてしまうと、「これは有料です」のつもりが、「ただでよい」と思われてしまうこともありえます。欧米圏のお金のサインは「紙幣」ですから、反対に「紙幣のしぐさ」をされても、日本人にはピンときません。このように身振りによるコミュニケーションには不十分な面が多くあります。
日本の「男女」や「自分」だけでなく、日本の手話と日本の身振りの親縁性はかなり強いものがあります。このように考えてくると、「手話は身振りから発達してきた」と考えるのは妥当でしょう。日本の身振りは明治以前からあることは確かです。「グッド」な「ノーグッド」のように外国から入ってくるサインもそれなりにあります。近年、左翼系運動家に見られる「中指を立てる」サインは日本の伝統的な身振りにはなく、アメリカ系のサインです。それを反米運動にも用いるのは、アメリカに対しては意味があるかもしれません。しかし日本国内で日本向けにするのは、ちぐはぐな印象を受けます。日本でも浸透している「ピース」サインは、元はVサインであり、勝利victoryを意味するものでした。戦勝と平和は似たような社会現象かもしれませんが、同義ではありません。戦敗国がVサインで平和(ピース)を示すというのも違和感がありますね。近年、ピースサインの裏返しや下向きが若者の間に見られますが、これはどういう意味になるのでしょうか。まさか「ノーピース」ということではないと思いますが、意味を知りたいです。
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