手話の雑学12

一見バラバラに見える現象をまとめる方法の1つが「共通性」の発見です。すべてがバラバラという現象は稀有で、ほとんどの現象には共通性があります。この共通性を見つけ出し、そこから法則性を見出していく、ということが古典から今に続く基本的な科学の手法です。一見、バラバラに見えるものでも、共通性を見つけ出して、まとめることで「分類」ができるようになります。言い換えると、変種というのは、正確には「共通性をもった群」ということです。
ここで改めて「変種」という概念について考えてみます。「種類」として考えれば、理論的に言語の種類は「人の数だけ」存在します。つまりは「個性」です。しかし、もし人間全員がバラバラな言語を使用していたら、会話が成立しません。会話が成立するためには、共通な何かがあって、それを伝達することが不可欠です。つまり、「個人的であると同時に集団的(共通)である」という一見矛盾するようなことがあるわけです。このことは案外、理解されていません。簡単に言い換えれば、「物事には二面性がある」ということで、これはよく「紙の裏表」に例えられます。表は裏がないと存在できませんし、裏は表がないと存在しません。「表裏一体」といわれています。
哲学の世界ではこれを「二項対立」と呼んでいます。この考え方は物事を思考していく上で基本的な技法です。少し厄介ですが、二項対立的な説明をすると、個人と集団(社会)は表裏一体の関係にあります。どちらかだけではどちらも存在しえないのです。しかし、近代になって、片方だけで存在するという考えもでてきました。二項対立で考えると、すべてが黒か白かという判断に分かれてしまいますが、現実には白でもなく黒でもない灰色という中間的な存在や、善か悪かという判断で、どちらでもないという「曖昧」なこともたくさんあります。聴覚障害の例でいえば、「聞こえる」と「聞こえない」の二項ではなく、「聞こえ方の程度」がさまざまで、「灰色の判定」が一般的です。それでも、障害者手帳の発行とか、教育の選択など、どちらかに決めなくてはならないことが世の中にたくさんあります。そこで「一定の基準」を設けることで、「二分化」していくことになります。こうした基準によって分類されているのが、「聾者」「難聴者」「聴者」という分類です。この分類ではすべての人が納得できるわけではありません。とくにそれによって給付に差があったりする「金の問題」になると必ず不満がでます。
このように一括りにまとめることのメリットもあると同時にデメリットもあるのが普通です。メリットとデメリットというのは二項対立的な概念ですが、損得も二項対立的な概念で、それらが結びつくと、非二項対立的な「実際の現象」を二項対立的な概念で分類する、という矛盾が生じます。この問題は現代でも未解決なままですから、科学を目指す人は常に念頭においておく必要があります。非常に頭の痛い問題ですが、この問題が手話にも関わってきます。まず「手話は聾者の言語」という命題を次に検証してみましょう。
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