手話の雑学19

家庭言語についても習得の段階で既に多くの変種が存在しますが、子供が社会との関りが増えてくると、新たな言語へと進化します。その環境変化の中で、一番大きな環境が教育です。日本だと保育園、幼稚園があって、義務教育機関への参加があります。ここで問題になるのが、それらの教育機関で使用される言語です。多くの場合、そこで使用される「教育言語」はその国の言語いわゆる「国語」が使用されます。
国語といっても、実は国によって、複雑な状況があります。日本では日本語が国語であり、それ以外の言語が使用されることは少数です。こういう国にやってきた「移民」は言語的な苦労があるのは当然です。自分の言語である母語と移住先の言語の違いが学習成果にも影響を与えその先の進学や就職にも影響を与えます。移民でなくとも、手話を母語とする子供は教育言語の習得が困難であることは容易に想像できます。では聾児と移民児とどちらが大変かといういと一概に判断できません。というのは、教育言語は文字によることがほとんどで、国語教育の最初は文字教育であることが普通です。ひらかなやカタカナのような「表音文字」はその音、正確にいえば音韻が習得されていることが前提となります。その点では聾児も移民児も日本語の音韻が入っていない点は同じですが、移民児は場合によっては、幼児期から日本語環境にあって、口語を習得している場合もあり、口語をまったく習得していない場合もあります。まったく口語を習得していない移民児の場合は、音と文字を同時に覚えなくてはなりません。聾児の場合も、早くから文字に親しんでいることもありますが、音韻の獲得は不十分であるため、文字学習も容易とはいえません。それでも視覚認知能力は高いため、文字認識と学習能力は移民児より高いことも推測されます。むろん、個人差もあるので、ここでも文字言語習得にさまざまな変種が生まれてきます。もし移民の中に聾児がいたらどうなのか、そうした観察例の報告がないので、実態はわかりませんが、また別の変種になるのかもしれません。 日本では、教育言語は表音文字の学習から漢字学習へと進みます。この漢字学習の段階に入ると、そろそろ個人的な学習の差異が生まれてきます。漢字だけでなく、計算能力、音楽能力、絵画造形能力、運動能力、などその後の学習に影響を与える能力差が明確になってきます。その能力差は素質というか遺伝的な要因もあれば、家庭環境の違いから生じてくるものもあるので、その多様性はそれまでとは比較になりません。この習得能力の差が聾児の手話習得にも多大な影響を与えます。とくに大きいのが特別支援学校に入るか、普通学校に入るかの差は環境がまったく違います。世間一般では、いわゆる「ろう学校」では手話を使用している、と思う人が多いのですが、実際は学校ごとに異なり、手話使用の場面もバラバラです。とくに大きな違いは、義務教育校は住んでいる場所からそれほど離れていませんが、特別支援学校は遠くにあることが多いのです。
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