手話の雑学53


手話で話す女性のイラスト

1週間の曜日の名前について、英語と日本語の関係はどうかというと、Sunday, Mondayのような語と日曜日、月曜日を比較して見ると一見にdayが「曜日」のように見えますが、よく観察すると月とMon, 火とTuesは対応していません。日本語の曜日は語源的には西洋の曜日からの翻訳語です。英語の曜日の名前は西洋の神話が起源になっていますが、訳語のできた明治時代、その知識の理解がなかったのでしょうか、それとも訳しようがなかったのでしょうか。結果として、当時、誰もが知っていた陰陽五行説がとられました。

陰陽五行説については、過去のコラムをご覧いただくか、各自検索してください。陰陽の2つに大中小を組み合わせると、大陽=太陽、大陰=太陰=月、中陽=火、中陰=水、小陽=木、小陰=金となります。陰陽がないのが土です。そこで陰陽五行説に従い、大陽の後に大陰、中陽の後に中陰、のようにバランスよく配置し、最後はどちらでもない中性の土を配置する、という訳語を考えました。この訳語は、曜日の概念が普及する以前の幕末だったそうです。そして曜日が硬式に採用されたのは明治6年のことで、この年は多くの西洋の「文明」が一気に採り入れられた年です。今は英語話者も日本語話者も語源の意味を意識することはまずないと思いますが、英語話者は西洋神話、日本語話者は陰陽五行説からできた語を使用するという「言語文化」を形成しています。そして日本手話は日本語からの訳語であることが推定されます。それ以前は1週間の曜日という概念はなかったと推定されます。それは日本語も同じで、1週間と曜日という概念が「文明開化」によってもたらされた西洋のキリスト教文化だからです。このように言語や文明が接触すると文化も混淆するのです。興味深いのは、文明開化でも月名は西洋語からの借用はありませんでした。それは日本に元から1月の概念があり、月名もあったからです。その月名は現在では数字のみが標準となっていますが、旧暦ではいろいろな異名がありました。その文化は旧暦廃止とともに消滅の方向を辿っています。言語や文化も時代や社会の変化と共に変化していくものです。

日本手話の曜日表現は、日本語の月、火のような意味をそのまま表現しています。例外は「日」です。日曜日は「赤+休み」という独自の表現で、カレンダーで赤くなっている日、という意味に休日である、と意味が重ねられています。休日以外の祝日は「旗日」ということで、旗が十字に重ねられている、これもカレンダーの記号が語源となっています。では、カレンダーで日曜日が赤で、祝日を国旗で表すようになったのは、いつからか、というと諸説あるようです。国旗で祝日を表すのは明治時代、日曜日を赤で表すのはカラー印刷が普及した昭和20年代だそうです。その説に従えば、日本手話の「日曜日」は昭和20年代以降に作られたと推定できます。日曜日だけ後から付け足すというのも不合理ですから、「曜日の手話は昭和20年以降に作られた」という推定ができます。実際、明治時代に作られた手話辞典には曜日は掲載されていません。

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