手話の雑学75

5. 習得(acquisition)への影響
子どもは手話でも音声語でも、象徴性の高い表現から早く習得します。手話では、飲む・叩く・落ちるなど、図像性の高い語彙が初期に出やすいという傾向が見られます。音声では、ドンドン、ブーブー、チクッなど、音象徴語が初語に混じりやすい傾向があります。
象徴性は、抽象概念の前に“感覚の足場”を提供するため、言語発達のブースターとして働きます。
6. 抽象概念への橋渡し
図像性は具体的動作や位置関係に強いですが、抽象概念にもじわじわ延びていきます。表情・動作の誇張が心理状態を示す典型です。
音象徴もまた、抽象へ伸びています。「ずっしり重い責任」「キラキラした未来」など、音の雰囲気を抽象内容に転写するのです。
どちらも、具体的感覚 → 抽象概念というマッピングの架橋役になっています。
以上をまとめると、「図像性と音象徴は“兄弟のような別物”」に例えられます。視覚と聴覚という違いは大きいけれど、構造の骨格には共通点が多いのです。どちらも
・「形と意味の距離」が短い、どちらも文法に統合される
・どちらも認知的ショートカットとして働く
・どちらも創造性の土壌になる
・どちらも習得を助ける
ただし、
・図像性は空間を扱うのが得意で、立体的・構造的な象徴
・音象徴は時間的で、リズムや質感の象徴
という“世界の切り取り方”の違いが際立ちます。この違いは聴覚と視覚の違いに由来するかもしれません。脳における分野が異なります。これは人間の進化と深い関係がありそうですし、遺伝子にも関係があるかもしれません。実は大変奥の深い問題なのです。人間だけでなく、動物の進化とか、言語の発生など、幅の広い視点からの研究が必要です。
哲学的な議論はひとまず脇に置いて、視覚と聴覚というチャンネルの違いは、脳のどこで処理されるかという「局在」と無縁ではありません。むしろ、手話の図像性と音象徴がそれぞれ独特の力をもつ理由のひとつに、脳の処理ルートの違いが関わっています。ただし、脳は単純な分業制ではなく、とても柔軟に仕事を回しているので、ここは慎重に考える必要があります。脳の情報処理はマルチモーダルで、相互に関係しながら、処理をしているようです。詳しい説明は専門家に任せるとして、ここではごく単純化した分類だけを紹介します。
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