手話の雑学98

■ 6. 「責任」:肩に荷を負う動き
形:肩の上に手を乗せる/押す/支える動作。
● 身体性:重荷=責任という心理的圧力が、物理的負荷のイメージで表現されます。
● 認知メタファー:責任は荷物である(RESPONSIBILITY IS A LOAD)、引き受ける(take on)=荷を背負うという英語 “shoulder responsibility” や日本語の「肩に負う」と同じメタファーが、手話ではより直接的に視覚化されています。
■ 7. 「忙しい」:手の往復運動=オーバーフロー
形:手を素早く前後に動かす
● 身体性:身体が落ち着かず、物事が“詰め込みすぎ”で滞っている感覚。
● 認知メタファー:忙しさは空間の過密状態である、動作の過剰さ=負荷の可視化
手の運動そのものが、“処理が追いつかない”状態を直接表します。
■ 8. 人物参照(指示語):「あなた/彼/私」は空間上の点
形:指差しの方向だけで人物を表す。
● 空間性の極致:手話では、指示語が「声の語形」ではなく、空間の配置になります。「私:胸部近く」、「あなた:対面方向」、「彼:任意の空間位置(話者が設定)」。これによって、
・参照点の切り替え
・主語・目的語の保持
・複数人物の文脈管理
などが非常に視覚的に行えます。
これはジェスチャー起源説とも深くつながる、空間=文法の最も典型的な現象です。
■ 9. 動詞の“方向性”(与える、言うなど)
形:動詞が A→B の方向へ動く
● 空間性:動詞の方向が格関係を担当します。
与える
A が B へ与える → Aの位置からBへ動く
B が A に返す → B→A に逆方向
● 身体性・メタファー:「行為は空間移動で表される」という、ジェスチャーと認知メタファーの融合です。
これらの例だけでなく、手話にはメタファーが解釈される語が多くあります。それが手話が音声言語と共有される点で、初学者にも理解されやすい要因の1つと考えられます。
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