手話の雑学111


手話で話す女性のイラスト

ナラティブ手話の「波動関数」について考えてみましょう。比喩を使うなら、こう言えます。

「ナラティブ手話は意味の波動関数をもつ」。それは「時間・視点・身体配置にまたがって広がっている」。そして「分析はその一部を「測定」する行為」だから、「語彙分析するとナラティブが壊れる」し、「ナラティブを保つと語彙境界が溶ける」ということで、どちらも「正しい」のですが、同時には成立しない、ということです。

ここで前述のランガーによって論理を補強すると、「意味は命題ではなく、形式そのものに宿る」ということですから、ナラティブ手話では、時間配分、身体の緊張と弛緩、空間の使い方の変化が、「何が起きたか」ではなく「どう経験されたか」を担います。量子論的に言えば、これは数値ではなく状態の遷移です。

さらにカッシーラ的な整理をすれば、ナラティブ手話とは、「出来事を写す言語」ではなく、出来事が意味として立ち上がる象徴形式であり、観測(分析)は、その象徴形式の一断面を固定する操作です。

では、最終的にナラティブ手話分析の正しい方法はなんでしょうか。
量子観測モデルを受け入れるなら、分析の態度はこう変わります。

・「正しい意味はどれか」ではなく
・「どの読みが、どの条件で立ち上がったか」を書く

つまり、

・視点の選択
・分析単位の設定
・書記化の方法

これらを、意味生成の一部として記述することです。
分析者は外部ではなく、ナラティブに参加する観測者です。

結論としては、
量子観測モデルで見ると、ナラティブ手話の意味は「解釈されるもの」ではなく、観測という出来事の中で、その都度「起こるもの」です。手話が曖昧なのではありません。豊かすぎて、同時に一つに固定できないだけです。そしてその性質こそが、ナラティブ手話を人間の意味生成の最前線に置いている理由です。

以上がハイゼンベルクの不確定性理論を応用し、ランガーやカッシーラの哲学で補強した手話分析手法の提案です。当然ですが、まだこうした視点による手話研究はありませんから、私自身を含めて、これから手話研究を始めようとする人にもヒントになると信じています。

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