コーネットとキュードスピーチ

ストーキーとの対話は1時間では足りないほどでしたが、次の予定もあって、その日は終わりました。次の予定はコーネット(Orin Cornett)です。日本では聾教育者という扱いですが、本当は物理学者です。キュードスピーチは日本では「キューサイン」と改称され、今でも一部の聾学校では使用されています。聾教育は聴覚障害児への国語教育であり、国語を獲得することがその後の教育につながるという思想は今も世界で共有されています。教育と文字は不可分で、教科書は文字で書かれています。無文字社会での教育が進まないことは明白であり、とくに固有の文字を持たない国の国語教育は非常に困難です。日本には日本語があり、日本文字があることが今日の日本国民の教育の高さの理由であることは案外認識されていません。文字教育が国語教育の根本であることは今も変わりません。
一方で聴覚障害児への文字教育は文字の音を抜きにして学習させることは困難です。日本語は音を表記する文字にカタカナとひらがながあり、さらに漢字には複数の読みがある、という極めて複雑な言語体系をもっています。欧米の言語は文字数も少なく、表音は綴りによって表されます。
聾教育で国語を教育するには、文字学習から始める方法と意味をもつ手話単語学習から始める方法があります。口話法では、音の代わりに口の形を用いる読話(どくわ)という方法があります。読唇術というのは誤解で、唇を読んでいるのではなく、口の形の変化を読み取っていきます。この方法の弱点は、母音は訓練できますが、口の内部変化である子音は理解できない、ということです。そこで口の形で母音を理解し、子音は手で示すという方法がキュードスピーチの根本原理です。コーネットは物理学者らしく、世界の言語をできるだけ集め、そのデータから、どの手の形にどの子音を割り当てるかを研究しました。 現在では、この思想は進化した形で応用され、とくに幼児では効果があるとされ、「学習後は次第に抜いていく」という補助手段と考えられています。とくに日本では、指文字との併用も行われているため、キューサインという形の進化も見られています。これは日本語がモーラ対応であり、子音と母音に分けて認識されない、という言語的特徴が関係しています。コーネットとの対談の中で、彼は当時のアメリカ聾教育が手話に傾倒していくことで、孤立化しており、口話法の重要性を強く主張していました。そしてキュードスピーチが欧米圏では普及しないが、日本やインドなどで広がっていることを知っていて、今後の進化を期待している、と述べていました。現在の日本のキューサインを知れば、さぞ喜ぶことでしょう。口形だけの読み取りと補聴器だけの言語習得に限界があることはわかっており、その修正案としてキューによる補助をする、という思想が広がることで、国語教育への貢献を願っていたわけです。とくに数の多い難聴児については重要であるとも言っていました。この見解は今も正しいと思います。
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