手話研究の星8 スパラ&ニューポート(Supalla & Newport)


十三夜の月のイラスト

ロチェスター大学には、聾者の研究者として著名なテッド・スパラがいるので、事前に予約して面談しました。CLに関する論文は読んでいたので、詳しく討議したいと思っていたのですが、通訳してくれたのが共著者のニューポートであることを現場で知り、大いに驚きました。二人はパートナー、日本風にいえば別姓の夫婦です。共著者だけあって、討論もスムーズでした。スパラ(聾)&ニューポート(聴)の共著論文は初期の手話学においては画期的で、とくにCLについて初めて理論的な考察をしたことで知られています。

CL研究が進んだ現在では、彼らの枠組みは否定される方向にありますが、基本的な枠組みは変わっていません。ただ彼らはCLは普遍的なものだと考えていたようですが、日本手話にはないもの、反対に日本手話にしかないものなどの個別性があり、普遍的ではないことがわかっています。日本ではCLという概念が十分理解されず、実物を真似した動作がすべてCLだ、というような誤解も多く、ジェスチャーとの区別が曖昧なまま手話の言語的特性という形で一般に広がってしまいました。

CLという専門用語の語源はクラシファイア(classifiers)から来ており、それについては「分類詞」という訳語がありますが、語ではなく形態素である言語もあり、それを意味する「分類辞」という訳語もあって、それも混乱している理由の1つでもあります。クラシファイアという品詞は世界的には珍しいもので、なかなか理解されないのですが、日本語には「~枚」「~匹」のように数字と連結されて事物の特徴を示す形態素が豊富です。直観的に「ものの大きさ、質感、特徴などを表す」という感覚が理解しやすいと思います。逆にいうと、日本語を学ぶ外国人には難しい文法の1つです。日本人は外国語に翻訳する場合、「一人」だとどうしてもone personと言いたいし、一匹はどうしたらよいか困ります。手話には、クラシファイアが豊富で、手の形で実物や抽象的な形を表現します。日本語の分類辞とは分布が違いますが、なんとなく理解できるのではないでしょうか。

スパラの元には聾者の研究者が多く慕って集まっており、日本からは大杉豊先生もスパラの所へ留学され学位を取得されました。スパラとの縁で紹介状を書いただけですが、こうした縁がつながっていくことも大切だと思っています。実はここのスパラはテッド(Ted)といい、スパラ家の長男です。スパラ家は有名な聾一家で、確か男性三兄弟は全部聾者だったと思います。三人とも優秀ということで知られた存在ですが、長男のテッドにはロチェスターで、次男と三男にはカリフォルニアで会った記憶です。挨拶程度だったので、詳しいことは覚えていませんが、おっとりした長男、やや引っ込み思案の次男、いかにも切れそうな感じの三男と、それぞれ個性的であったことが印象的でした。アメリカにはこうした兄弟で有名な聾者がいましたが、日本は聾家庭も少ないせいか、そういう兄弟はあまりみたことがありません。その背景には聾教育の影響もあるのだと思われます。

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