日本史と世界史で読み解く 北米建国物語 第1回鉄砲が日本へ伝わった頃、北米では何が起きていたのか ― 戦国日本と新世界が出会う前夜 ―

これまでは北米大陸内のことだけに焦点を当ててきましたが、今回は視点を変えて、「同じ頃、日本ではどんな状況だったのか」という見方から、北米史と日本史を対照的に見てみます。
1543年、日本の歴史を大きく変える出来事が起こりました。一隻の中国船が嵐に流され、種子島へ漂着します。その船にはポルトガル人が乗っており、日本へ初めて鉄砲が伝えられました。この「鉄砲伝来」は戦国時代の戦い方を一変させ、やがて織田信長による天下統一への道を切り開く重要な出来事となります。
では、その頃、地球の反対側にある北米では何が起きていたのでしょうか。
実は、同じ時代、北米でも後のアメリカとカナダの歴史を決定づける大きな変化が始まっていました。
日本では戦国大名が領土を争い、ヨーロッパでは大航海時代の真っただ中。そして北米では、ヨーロッパ人が初めて広大な大陸の姿を知り始めていたのです。
この連載では、日本史と北米史を同じ時間軸で眺めながら、「なぜ日本とアメリカはこれほど違う国になったのか」を考えていきます。
・一つの世界で起きていた三つの歴史私たちは学校で、日本史と世界史を別々に学びます。
日本では戦国時代。世界史ではルネサンスや宗教改革。アメリカ史ではコロンブスや大航海時代。しかし実際には、これらはすべて同じ時代に起きていた出来事です。
例えば1543年。日本では種子島に鉄砲が伝わりました。
その頃ヨーロッパでは、宗教改革が大きく広がり、カトリックとプロテスタントが激しく対立していました。スペインとポルトガルは大西洋を越えて新世界へ進出し、フランスも新しい航路を求めて北米へ探検隊を送り出しています。つまり、日本はアジアの東端で戦国時代を迎え、ヨーロッパは世界へ進出し始め、北米はその舞台となっていたのです。
・コロンブスからまだ半世紀
1492年、クリストファー・コロンブスが大西洋を横断しました。彼はアジアへ到達したと思い込み、生涯「新大陸」を発見したとは知りませんでした。しかし、その航海は世界史を一変させます。ヨーロッパ人は、それまで知らなかった巨大な大陸の存在を知り、次々と探検隊を送り出しました。
1543年という年は、コロンブスの航海からわずか51年後です。
現在に置き換えるなら、1975年頃の出来事が、まだ現在へ直接つながっているような時間感覚です。つまり、日本へ鉄砲が伝わった頃、北米探検はまだ始まったばかりだったのです。
・フランスは「カナダ」を探していた
この時代、北米で最も活発だったのはスペインだけではありません。フランス国王フランソワ一世は、新しい航路と新しい富を求めて探検家ジャック・カルティエを送り出しました。
1534年。カルティエは現在のカナダ東海岸へ到着します。翌1535年には巨大なセントローレンス川をさかのぼり、先住民族の村を訪れました。
そこで耳にした言葉が「カナタ」でした。これは先住民族の言葉で「村」あるいは「集落」を意味していました。カルティエはこれを地域全体の名前だと思い、「Canada」と地図へ記します。こうして「カナダ」という国名が誕生しました。
興味深いことに、この頃の日本ではまだ「アメリカ」という国どころか、「カナダ」という名前すら存在していませんでした。
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