日本史と世界史で読み解く 北米建国物語 第7回(5) 田沼時代、日本は商業、北米は自治へ

十三夜の月のイラスト

― 田沼意次とベンジャミン・フランクリンの時代 ―

・田沼時代とフランクリンの時代

18世紀後半の日本と北米を並べてみると、非常に興味深い構図が浮かびます。

日本は田沼意次→商業・流通を重視→商人の経済力が増加→都市文化が成熟→政治制度は幕府中心のまま

北米ベンジャミン・フランクリン→商業・出版・教育が発達→植民地議会の経験→自治意識が強まる→本国との対立→独立運動へ

つまり、日本では、「経済が変わっても政治体制は維持される」方向に進み、北米では、「経済と社会の変化が政治体制そのものを変える」方向へ進んだのです。

そして日本とアメリカの歴史が大きく分かれる

1776年7月4日。アメリカの十三植民地は「独立宣言」を採択します。

「すべての人は平等に造られ、生命、自由、幸福の追求という権利を持つ」という理念が掲げられました。これは今もアメリカ合衆国の国是となっています。ここでいう平等は日本で想像する概念と違い、「神の下の平等」であり、それが「造られ」という意味です。この概念の違いは日本人は理解しておく必要があります。

その頃、日本では田沼意次の政治が続いていました。日本の人々は、自分たちの国が将来「アメリカ合衆国」という新しい国家と接触することになるとは知りません。

一方、アメリカの人々も、約80年後に太平洋を越えて日本へ軍艦を派遣することになるとは知りませんでした。しかし、歴史は確実にそこへ向かっていました。

・二つの「近代」の始まり

18世紀後半、日本と北米では、それぞれ異なる形で近代への準備が進んでいました。

日本では、商業経済の発達、都市文化の成熟、蘭学の発展、全国的な情報網などが蓄積されていました。

北米では、植民地間の交易、議会政治、出版文化、自治の経験、啓蒙思想が発達していました。そして1776年、北米ではついに独立革命が始まります。

日本では、江戸幕府がまだ安定していました。しかし、その約80年後、日本もまた大きな政治変革を迎えることになります。同じ「近代化」といっても、概念も内容も同じではなく、現代の感覚で評価すると、歴史を誤って解釈することになります。

次回予告 第8回のテーマは、「アメリカ独立、日本は田沼から寛政へ」― 独立宣言と寛政の改革、二つの社会が「政治の立て直し」に向き合った時代 ―です。1776年、アメリカは独立を宣言しました。その後、独立戦争を経て1783年に正式な独立を勝ち取ります。一方、日本では田沼政治が終わり、松平定信による寛政の改革が始まります。アメリカでは「新しい国家をどう作るか」。日本では「既存の幕府政治をどう立て直すか」。同じ18世紀末、太平洋を挟んだ二つの社会は、まったく異なる方法で「政治の再設計」という課題に向き合うことになるのです。

2026年9月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  

コメントを残す