立秋
まだまだ暑いですが、今年は8月8日が立秋です。旧暦では6月22日ですから、なんとも不思議な感覚です。二十四節気は太陽の運行ですから、新暦とは近いのですが、それでもまだ早い気がする一方で、旧暦だと1か月以上の差があって、今年のように閏月があるとなおさら差が大きくなります。昔の人はどう思っていたのでしょうか。そもそも暦の日付はあまり気にしていなかったのかもしれません。暦は行事のためにだけあり、実際の季節の移り変わりは自然を見て体感的に決めていたのでしょう。誰かを責めるでもなく、鷹揚に過ごしていたと思われます。七十二候では以下のような風情のある説明がついています。
初侯:涼風至(すずかぜいたる)涼しい風が吹き始める頃。まだ暑い時期だからこそ、ふとした瞬間に涼風を感じることができます。
次侯:寒蝉鳴(ひぐらしなく) ヒグラシが鳴き始める頃。夕暮れ時に響くヒグラシの鳴き声が一服の清涼剤になります。
末侯:蒙霧升降(ふかききりまとう) 深い霧がまつわりつくように立ち込める頃。朝夕のひんやりとした空気に秋の足音を感じます。
立秋からの挨拶状は「残暑お見舞い申し上げます」となります。また現代とは感覚が違いますが、立秋の期間に新暦のお盆があります。今だと終戦記念日があります。お盆休みに帰省する人は今も多いのではないでしょうか。
秋という字に惑わされてしまいますが、秋が始まるというだけで夏が終わるわけではありません。二十四節気では立秋の後に処暑がきますから、立秋の期間はまだ暑く、朝夕が少し涼しい風が吹くという程度の意味です。立秋にはとくに行事食はなく、旬の食べ物としては、桃やとうもろこし、枝豆、そうめんといった夏のものが出回ります。京の和菓子として「観世水(かんぜみず)」という水を使ったものが知られています。上品な水まんじゅうですが、趣があります。野菜はなす、きゅうりなどです。魚はすずきが出回りますが、年によって不漁のこともあります。
立秋の頃から、ヒマワリが咲き誇るのですが、最近は観光地でヒマワリの畑を名物にして客寄せをしているところが増えました。ツユクサもこの頃に花を咲かせることが多いのですが、昔はどこにでも見られたものですが、最近はあまりみかけなくなりました。昔は蛍籠という虫かごに露草を入れて、蛍をその中に放すと、蛍の光でほのかに輝く露草の葉の水が美しいことから、別名蛍草と呼ばれることもありました。今は肝心の蛍もホテルやレストランの客寄せになってしまい、街中で見ることはなくなってしまいました。蛍は環境に依存するのでSDGsの象徴なのです。
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