はてな


茶碗

8月7日は語呂合わせだとハナです。そこで「はてな」について一席。有名な落語に「はてなの茶碗」というのがあります。上方落語で、関東では「茶金」というそうですが、個人的には上方の方をよく聞きました。あまり詳しく書くとネタバレになりますが、茶金のいうのは茶屋の金兵衛の省略です。茶屋といっても大きな今でいう骨董屋さんで、お公家さんの家にも出入りしている大商人です。この茶金さんが清水寺の茶店でお茶を飲みながら、茶碗を眺めて「はてな」と呟いたのが話の発端です。この話には茶金さんの他に油売りが主役です。脇役として茶金さんの大番頭やお公家さん、帝まで登場する多彩ぶりです。油売りは京都の商人ですが、元は浪花の出身。病気の母親を抱え、京都まで出稼ぎです。なんとか薬代を稼いで帰りたい一心で、大博打を打つのですが、生憎空振り。それを見かねた茶金は法外な値段で普通の湯呑茶碗を買い取ります。ブランド料というわけです。それが上流社会の趣として受けて、最後には千両の値がつきます。この話はここでそう終わらず、茶金さんは苦労して油売りを見つけ、半分を渡します。それに気をよくした油売りはさらに儲けようとして、アクドイことを考えます。それがサゲです。

話の筋だけでもおもしろいのですが、浪花の小商人と京の大商人の違いのコントラスト、また品格の大きな違いを演じ分けるところが妙味です。故桂米朝師が掘り起こした話だそうで、茶金を演ずる米朝師の風格と品格が天下一品です。下題の「はてな」のセリフの時の言い回しと雰囲気が非常に大事で、思わせぶりでいて、普通の感想のような雰囲気の表現がなかなか難しいです。

浪花の商人がみなせこいわけではなく、鴻池、住友など大商人もおおぜいいました。ただ骨とう品の目利きのような信用を売るタイプの商人は少ないかもしれません。

わらしべ長者のように次々と価値が上がっていく話としては「井戸の茶碗」というものもがあり、これは江戸が舞台になっています。この話のベースは正直者の武士の意地の張り合いがテーマであり、同じ茶碗の値が上がっていく話でも、「はてなの茶碗」とは趣もテーマも異なります。これは関西の町人文化と江戸の武士文化が反映されていると思われます。

現代でも茶碗などの焼き物には素人にはわからない値段のつくものがあります。焼き物は基本的に一点物で、同じ作者でも同じものができない、とされていて、値段は需要と供給のバランスで決まるため、骨董になるとどんどん値が上がるものがある一方、値下がりしていくものもあり、売買が難しい商品です。壊れた茶碗が金継ぎされると本来より値が上がったりと、なかなか素人にはわかりにくい世界です。大きい壺と小さい壺が展示してあり、500万と100万の値札がついていて、二人の男が議論しています。結論が出たところに係員が来て「すみません、反対でした」と値札を入れ替えたという落語もあります。やはり骨董は「はてな?」です。

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