啓蟄
3月5日は二十四節気の1つ、啓蟄(けいちつ)です。天気予報では、ほぼどの番組でも二十四節気の話題をしますが、学校では教えていないと思います。旧暦だからでしょうが、太陽暦と関連しており、理科の勉強にもなりますし、国語や歴史や文化の勉強にもなるので教えてほしいです。
啓蟄とは、寒さが緩んで春の陽気になってきたことで、土の中から虫たちが動き出す季節のことを指します。「啓」はひらく、「蟄」は土の中で冬ごもりをしている虫、のことです。
土の中で越冬していた蛹(さなぎ)が地上に出てきたり、冬の間は土の中でじっとしていた蟻などの虫たちもでてきます。雪も解け、土に日があたるようになってくるため巣の中も暖かくなってきます。そうして春を感じた虫や、冬眠していた生き物たちが続々と動き出す季節です。
啓蟄の七十二候は次のようになっています。
初侯:蟄虫戸を啓く(すごもりむしのとをひらく)。木の皮の間や土の中、落ち葉の隙間で巣ごもりしていた虫たちが外に出てくる時期という意味です。
次侯:桃始めて笑う(ももはじめてわらう)桃がその年始めて咲く時期という意味ですが、花が開くようすを笑い顔に例えるところがいいですね。この時期は桃だけでなく、菫(すみれ)、猫柳、カタバミなどが咲きます。雛祭りとも近いので、桃の節句といわれるゆえんです。
末侯:菜虫蝶と化す (なむしちょうとかす)。冬を越したチョウの蛹が羽化し、羽ばたく時期という意味です。菜の花にモンシロチョウが舞う姿は色もきれいで春の風情です。
「初物を食べる前に東を向いて笑うと寿命が75日延びる」という諺があります。いろいろなバージョンがあるようですが、初物だけでなく、旬の食べ物を食卓に取れ入れて、季節を感じたいものです。こういう季節感を味わう余裕があれば寿命も延びることでしょう。今は季節感のない食べ物ばかりスーパーで売られていますが、それでも少しは季節ものも出てきます。この時期はゼンマイ、ワラビ、菜の花、蛤、新玉ねぎなどが並びます。今では野に咲くものは入手不可能で、ビニールハウス栽培が多いと思いますが、それでも少しは季節感を感じる気持ちは残しておきたいところです。野菜や果物は季節感が減っていますが、魚などは季節があります。最近は温暖化とかで、魚が捕れる場所が変わってきているようで、漁業者は困っているようですが、消費者の立場からすると、どこの港で水揚げされたのかは関係なく、旬のものが安く食べられればありがたいと思うものです。ブランド化によって価値を高めて利益を大きくしよう、という気持ちがわからなくもないのですが、食べ物はブランドでなく、おいしさで決めたいものです。そのおいしさの評価の結果がブランドになっていくものです。
啓蟄を過ぎると暖かさも本格的になり、過ごしやすい季節になります。花の種類も増え、気持ちも明るくなる時期ですが、卒業や転勤などもあり、忙しい季節でもあります。
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