日本の障害者福祉政策
日本の福祉政策の中でも、外国にはない独自の政策がいくつもあります。その一つが障害者雇用政策です。正式名は「障害者の雇用の促進等に関する法律」といい英名もあり、Act on Employment Promotion etc. of Persons with Disabilitiesです。昭和35年制定です。この法律は障害者を雇用すると補助金や施設拡充の助成金が支給される、というアメがあると同時に、一定率の雇用をしないと罰金があり、会社名が公表される、というムチとセットになっています。こういう法律は今では珍しい存在です。法定雇用率は最近だと令和3年のも改定により、民間企業(2.2%→2.3%)、国、地方公共団体等(2.5%→2.6%)、都道府県等の教育委員会(2.4%→2.5%)と引き上げになりました。さらに民間企業の従業員数も45.5人以上から43.5人以上に広がりました。これらの政策により、障害者の雇用機会は広がりました。この法律にも弱点があり、対象が障害者一般になっているため、障害の種類と程度によって、雇用する側の姿勢も変わることです。
障害者を精神障害、知的障害、身体障害に分類していますが、令和4年の統計によると、障害者雇用の全体は61,4万人で、精神障害者が11万人、知的障害者が14.8万人、身体障害者が35.8万人とかなり偏りがあります。障害者の人口は障害者の総数は、964.7万人で、人口の約7.6%に相当します。内訳は精神障害者 419.3万人、知的障害者 109.4万人、身体障害者436.0万人です。採用比率を計算すると、精神障害者2.6%、知的障害者13.5%、身体障害者8.2%、全体として63.6%になっています。これだけ厳しい法律があっても、障害者全体の3分の2に満たない雇用率というのが事実です。あまり理解されていないのが身体障害者には肢体不自由(手足の動きに障害がある)、聴覚障害・平衡機能障害(耳の聞こえやバランス感覚に障害がある)、視覚障害(目の見えに障害がある)、音声・言語障害(声や言葉の発声・発音に障害がある)、内部障害(膀胱や直腸の排泄機能や免疫機能に障害がある)などが含まれているということです。身体障害者の雇用率が低い原因はそこに多くの種類が含まれているからで、この中でも雇用率はかなり差があります。障害は多様性があるので、一括りに考えることができないのです。
障害者雇用にはさらに多くの問題点があり、離職率の高さ(すぐに辞めてしまう)、平均給与の低さ(雇用主が給与が低いからと雇う)、地方求人の少なさ(地方には企業が少ない)などが指摘されています。従業員数の多い大企業では相当の人数の雇用が必要になりますから、机上論的には多くが大企業に勤められるような期待を抱きがちですが、待遇のよい大企業に就職できることは稀で、多くがNPOによる授産施設などで内職などにより、細々と稼いでいるというのが実態です。現場では「月2万円の壁」といい、頑張って働いても月額2万円になかなか到達しないという声があります。しかし一方で障害者年金という制度もあり、諸外国と比べると制度としては拡充しています。そして障害者の中で格差が大きいということもいえます。
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