やまとことば⑱ ~て動詞2


て動詞

「~てみる」というのはどの辞書にもだいたい「どういうものか結果を確かめるために実際に行為をすること」と説明されています。英語ではtry toに該当します。「~」のところにくるのは意志動詞です。文法としては、基本的に結果を確かめるために何かをすることが前提なので否定の形では使われません。「〇〇にしてみない」というのは形は否定形ですが、否定形を疑問文に用いて勧誘を表す用法です。「野球やらない?」「飲みにいかない?」などがその例です。お試しの意味なので、「ちょっと~てみる」「試しに~てみる」のように「少しだけ」のニュアンスのある語と接続した形がよく使われます。たとえば「このお菓子はすごく美味しいから、たくさん食べてみてください。」はおかしいです。しかし外国人の日本語には出てきそうです。「このお菓子はすごく美味しいから、たくさん食べてください。」という文と混同しがちです。どちらも勧誘しているので、コミュニケーション上の問題は少ないのですが、ニュアンスは違います。試食品を提示する場合は「」ですが、外国人が「このお菓子はすごく美味しいから、たくさん食べてください。」の意味だと解して、たくさん食べたら、マナー違反ということになりますね。これはマナーの問題であると同時に、言語表現のニュアンスがきちんと伝わっていないことにも原因があります。言い換えると、このテ形動詞はニュアンスが微妙で、日本語の用法としてかなり難度の高いものになります。しかし日本語からすると、一部の人だけが使う特殊な用法ではなく、普通に使われる表現であり、それに伴う文法があります。そうした文法やニュアンスはむずかしい分、語学の楽しみでもあり、その言語の背景にある文化を理解する機会です。しかし世にいう「英会話」のように、「日本語会話」をとりあえずの便に利用したいという人には普通の教育法では無理でしょう。そもそも日本人でちょっと食べてみてくださいすら、国語の時間にテ形動詞について勉強した経験がないので、どうやって教えたらよいのか、戸惑います。そういう場合は、実例を多く示して、カタマリとして学習させるという方法がとられます。このカタマリを最近の英語教育ではチャンクchunkと呼び、「簡単な英会話」では、チャンクを丸ごと覚える方法がとられています。昔の英語教育で、慣用句とか構文の丸覚えをしたのと同じ技法で用語が変わっただけです。このチャンク学習法を日本語に適用すれば、テ形動詞も例文と一緒に学習することで「実践的」な応用が可能です。また変化形として「~てみてください」は親しい仲の場合、「~てみて」と省略することができます。(例文:これ美味しいよ。食べてみて。)とか、若者などや地域方言では、更に省略して「~てみ」と言う場合もあります。(例文:これめっちゃうまいよ。食べてみ。)といった解説をつけると、さらに実用的になります。また遠慮がちな気持ちを表し、聞き手に対して丁寧な印象を与えるという使い方もあります。(例文:もう一度先生の授業を受けてみたいです。)どうでしょうか。みなさんも一度、日本語を考えてみませんか?

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