宗教と政治



日本では「政教分離」ということで、政治と宗教は分離することになっていますが、このことを国民がどの程度、理解しているか、疑問です。実は世界的にも統一的な見解はなく、国家により、フランスなどに見られる国家による一切の宗教的活動を禁止する厳格な分離(分離型)もあれば。国家が平等に宗教を扱えばよいとする英国などに見られる緩やかな分離(融合型)などに分かれています。また同盟型と呼ばれる、国家と教会は独立していても、一定の協力的制度関係が存在するタイプもあり。国家の教会への関与の例としては、司教の任命、司祭の報酬の決定などを国家が決める国もあります。たとえば、ドイツにおいては、教会は憲法上の地位を持って活動するが、政治と競合する領域ではコンコルダート(政教協約)を結んで解決することになっています。無論、国家と宗教が直接に結びついている国は今もたくさんあります。イランのように宗教者が国家を支配している国もあれば、国家が国教を指定している国もあります。日本では日本国憲法に「政教分離」の言葉はなく、根拠として日本国憲法第20条1項後段、3項ならびに第89条が挙げられています。つまり法律用語ではなく、政治・マスコミの用語だということなのです。戦後、日本を占領したGHQはアメリカの思想を日本に強制しました。アメリカは多民族国家であることと、独立の原理として、「信教の自由」つまり国家が特定の教会や教派のために公金を使ったり、特定の教会・教派の信者への優遇措置が違憲なのであり、多様な教会的伝統が国家形成に積極的に参与できるよう、特定の教派が突出した政治権力を行使できない枠組みを用意するという点に重点が置かれています。実際、大統領の就任宣誓はその人の宗教で行われます。日本では戦後ずっと、政治と宗教の関係が裁判でも争われ、自治体の地鎮祭や政治家の神社参拝に議論があります。社会主義国ではどうかというと、ロシア革命後のソビエト連邦は無神論国家として「反宗教」を国是とし、国家の宗教統制が徹底的に行われ、宗教信仰の自由はまったく認められなかった時代があります。ソ連では正統的マルクス・レーニン主義以外の思想は許可されなかったため、「真理の独占体制」とも呼ばれていました。しかし1988年のペレストロイカにおいてゴルバチョフはピーメン総主教に対してソビエトの教会弾圧について謝罪し、政教和解を申し入れ、1990年ロシア史上初めて信教の自由が認められました。プーチン大統領の「大国ロシアの復活」により、現在はロシア正教が多くの国民に受け入れられています。中国では中国共産党の党員が宗教を信仰することは禁止されていますが、公民の信教の自由と無神論を宣伝する自由が憲法で認められているそうです。北朝鮮では公民の信教の自由が保障されていて、仏教寺院、キリスト教会などの他「統一協会」の施設がありますが、その建設・運営には国家指導部の大きな理解と援助なくして成立しえない状態だそうです。また儒教文化が深く根付いた社会でもあり、状況が複雑です。日本では創価学会とか統一教会とか宗教が直接政治に絡むこともあります。

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