十五夜


十五夜

今年は9月17日が旧暦八月十五日で、いわゆる十五夜にあたります。満月の夜が十五夜で、その二日前が十三夜、十六夜(いざよい)は十五夜の翌日ですが、日本人はどれだけ満月が好きなのだと思います。満月は望月(もちづき)ともいい、和歌にもいろいろ織り込まれていますが、望月は朔日(ついたち)とセットであり、月初めと月終わりが新月で、月の真ん中が望月という、月の運行を基準とした時の流れの折り返しになっています。この考えが太陰暦です。月の満ち欠けは満ち潮や引き潮という海の変化とも関係があるので、海洋国には大切です。太陽にも運航があるのですが、こちらは満ち欠けはなく、空における位置が変わるだけです。しかし季節の移り変わりに影響を与えます。そこで旧暦は月の運行による太陰暦と太陽の運行による太陽暦を合わせた暦です。太陰は月、太陽は日ですが、陰と陽という陰陽五行説による命名がされています。陰陽五行説では、陰と陽のバランスが重要視されているので、最も陰なるものが太陰つまり月であり、最も陽なるものが太陽ということで、両者が存在することでバランスがとれている、と考えるわけです。現在では太陰という呼び名は廃れて、太陽のみが使われているのは、陰陽五行説からすると、なんともバランスが悪いといえます。現在新暦と呼ばれているのは、西洋のグレゴリオ暦を明治に採用したもので、太陽暦のみです。そのため月の運行には対応していません。そこで漁業や農業の分野では、旧暦を大切にし、そして旧暦の中で日本向けに付け加えられた雑節によって、作業日の指標としてきました。西洋においても、占星術などの占いでは太陽の運行だけでなく月の運行も当然資料としています。科学的に地動説が理解されていても、実際に天空に見えるのは太陽であり、月であり、星なのですから、天動説による暦が日常生活では使用されているわけです。NHKの大河ドラマ「光る君へ」でも、たびたび月を見る貴族の生活が描かれていますが、「同じ月を見る」ことで気持ちが伝わるような気持ちになるのは、現代的に「同じ空気を吸う」にも通じる、共有意識が重要であることを示しているといえます。とくに十五夜の月は毎月の望月よりも大きく明るいので、その気持ちが強く感じられます。実際の月の大小は地球との距離なので、秋の月が大きいとはかぎりませんが、秋になって空気が澄んでくると、より鮮明に月が見えることは確かです。都会で見る月よりも、空気がきれいな田舎で見る月の方が大きくきれいに見えます。十五夜は毎月あるのですが、とくに秋の「中秋の名月」はなぜそう呼ぶのかというと、7月・8月・9月が秋であり、その真ん中の望月という意味だからです。ただ科学的には月の満ち欠けの周期は13.9日~15.6日と変動し、いつも15日ではありません。15日を挟んで前後に動くわけです。そのため2024年の満月は旧暦なら八月十六日、新暦9月18日が満月です。言い換えると今年は「十五夜と満月が別の日」なので、行事としては2回やるもよし、どちらかにするもよし、という柔軟な対応が可能になっています。

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