うすい、を考える
「うすい」というのは、よく使う言葉ですが、何が薄いのかによって意味が変わります。「うすい」という言葉の語源は古い日本語に遡ります。古代日本語で「うす」は「薄(うす)」と書かれ、これは主に物の厚さや濃さが少ないことを意味しました。この「薄(うす)」が形容詞「うすい」として使われるようになりました。
歴史的用法の変化として、平安時代には、文献で「うすい」が「色が淡い」や「味が薄い」といった意味で使われていました。たとえば、『枕草子』や『源氏物語』にもその用例が見られます。
江戸時代には、「うすい」はさらに広範な意味で使われるようになり、「形が薄い」(例えば、紙や布の厚さが薄い)という意味でも使われました。
今日では、「うすい」は色、味、厚さなどに関して使われることが一般的ですが、抽象的な意味でも使われます。例えば、「人間関係が薄い」や「感情がうすい」といった用法が見られます。「うすい」の意味は色や味が弱いこと、例えば、「うすいピンク」「うすい味」のような用法、厚さが少ないこと、例えば、「うすい紙」「うすい布」、そして、感情や関係が希薄こと、例えば、「うすい友情」「うすい関心」にまとめられます。
「うすい」に相当する英語の表現にはいくつかあり、それぞれの文脈で異なるニュアンスを持ちます。Thinは厚さが薄い場合、例:a thin layer of paint(薄い塗料の層)の他に、体型が細い場合、例:a thin person(細い人)や空気や液体の濃度が薄い場合、例:thin air(薄い空気)、thin soup(薄いスープ)などにも使います。Lightは色が薄いこと、例:light blue(薄い青)、食べ物や飲み物の味が薄い場合、例:light tea(薄いお茶)、そして重さが軽い場合、例:a light bag(軽いバッグ)があります。Faintは色や光が薄いこと、例:a faint color(薄い色)、音や匂いがかすかな場合、例:a faint sound(かすかな音)などがあります。Weakは力や味が弱い場合、例:a weak signal(弱い信号)、weak coffee(薄いコーヒー)などです。Paleは色が淡い場合、例:pale pink(淡いピンク)、顔色が悪い場合、例:a pale face(青白い顔)などがあります。これらの訳語は、日本語の「うすい」と同様に、具体的な物理的特徴から抽象的な意味まで幅広く使用されます。その意味の違いは、日本人の意識と英米人の意識の差を生みます。Thinを体形や空気の濃度、スープの濃度に使ったりします。逆に濃い場合はthickになります。Lightが色に使うのは、もう馴染んでいます。Faintはなかなか難しいです。フェイントはスポーツのせいで、薄いというニュアンスがありません。Weakも「弱い」という意味しか学校で習わないので、信号やコーヒーに使うことは浮かびません。Paleはさらにむずかしく、どういう感覚なのかわかる人は少ないと思います。顔色が悪い人や青い顔をしている人にYou look pale。といって心配する表現がなかなかできません。ビールにpale aleがありますが、日本では白ビールと呼ぶことが多いようです。薄い、というのは元は物理的な意味でしたが、形容詞として感覚を表現するようになると、その対象には文化の差がでてきます。語の組み合わせ方を勉強しなくてはなりません。
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