日本の労働


コラム挿絵:労働組合の団体交渉のイメージ

3月1日は労働組合法施行記念日です。労働関係の記念日は5月1日のメーデーが知られていますが、これは外国の行事が日本に輸入されたのであって、実質的には1946(昭和21)年3月1日に労働組合法が施行されたことの方が意義深いと思われます。年号からわかるように終戦直後であり、アメリカの影響下であり、この年を境に日本の労働環境が大きく変わったことを示しています。労働組合法は労働三法のひとつで、労働者の団結権、団体交渉権、ストライキ権を保障する内容になっています。こういう労働者の権利というと、労働組合をまず連想しますが、本来の意義は組合のような団体でなくても、個人でも保護されているということです。ただ個人で企業と交渉することは困難が予想され、集団で交渉することの有利を保証しているわけです。労働三法というのは、労働基準法、労働組合法、労働関係調整法です。現在、日本の労働組合の組織率が低くなっていて、労働組合というと、なんとなく政治的な偏向があるような印象を持つ人が多いようですが、それはそれらの団体の指導者の政治性の問題であり、労働組合の本質的な問題ではありません。また労働組合が活躍するのは、争議の時が多いため、政治性の強さを感じるのも無理はありません。現在でも、特定の政党との結びつきがあからさまであり、とくに野党との結びつきが強いため、「反体制」と感じる人が多く、それが労働組合離れを促進している面は否めません。労働関係の調査研究は、大別すると、労働生産性と労働条件の研究に分かれています。労働生産性の研究は先進国との比較のものと、世界的な比較がありますが、労働条件の研究の方はほぼ先進国との比較ばかりが目立ちます。これは研究者の視点が、「日本はどこを目指すか」という目標を設定しているのが原因だと推定されます。研究成果を見ると、労働生産力の個人別GDP比較は、ヨーロッパの小国が上位です。人口が少ない国の方は平均値が高くなることは当たり前で、人口の多い大国は賃金の低い層も多いので、平均値が下がります。日本は人口が多い方ですから、低くなります。それをもって、日本の労働生産性が低いという議論も不正確です。一方の労働条件はアジアや太平洋地域との比較もあり、法的な制限つまり労働者を保護している程度が比較されていて、日本は中程度で、中国や韓国は低く、シンガポールやマレーシアなどは高いという調査結果が示されています。欧米との比較では、日本は低くなります。このため「日本は欧米先進国のような厳しい労働保護条件にすべき」という論議がでてきます。欧州でも大国は労働者保護が手厚いので、目標とすべき、という論理です。常識的に考えて、労働生産性と労働者保護は相反関係が見られます。それは先進国に限ったことで、後進国では相反関係にはありません、日本は一応先進国で大国の仲間つまりG7メンバー、という認識ですから、労働生産性と労働者保護の両方の推進を目指すのは至難の業であることが予想できます。近年の「働き方改革」政策は労働者保護にはなっていますが、労働生産性が伸びないのも当然の結果といえそうです。

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