啓蟄の候


コラム挿絵:啓蟄のイメージ画像

3月5日は二十四節気の1つである啓蟄(けいちつ)です。この言葉を聞くと、春が本格的にやってきた、という感じになります。二十四節気は、小寒・大寒・立春・雨水・啓蟄・春分・清明・穀雨・立夏・小満・芒種・夏至・小暑・大暑・立秋・処暑・白露・秋分・寒露・霜降・立冬・小雪・大雪・冬至です。一度に見ることはあまりないかもしれませんが、春夏秋冬以外の言葉も多く含まれていて、自然の移り変わりがわかるようになっています。元は古代中国から伝わったものですが、中国から伝わった二十四節気は日本の気候に合わないものもあったので、農耕が盛んだった日本では「雑節(ざっせつ)」という暦を合わせて、日本では旧暦として用いていました。雑節には節分や彼岸などがあります。二十四節気をそれぞれ三分割したものを七十二侯(しちじゅうにこう)といいます。一年間を七十二に分けたもので、初侯・次侯・末侯という三つの侯があります。啓蟄も初侯・次侯・末侯に分けることができます。初侯:蟄虫戸を啓く (すごもりむしのとをひらく)木の皮の間や土の中、落ち葉の隙間で巣ごもりしていた虫たちが外に出てくる時期という意味です。これこそが啓蟄です。次侯:桃始めて笑う (ももはじめてわらう)桃がその年始めて咲く時期という意味です。「笑う」という表現にほっこりした感じがします。花が咲くようすを笑顔に例えることは他にもありますが、梅ではなく、色香の強い桃の花だとその感覚がより出ます。末侯:菜虫蝶と化す (なむしちょうとかす)冬を越したチョウの蛹が羽化し、羽ばたく時期という意味です。蝶々の幼虫が菜の花によくつくことから、菜虫と呼ばれています。啓蟄の頃に咲く花は、桃の他にも、菫(すみれ)、猫柳(ねこやなぎ)、酢漿草(かたばみ)などがあります。カタバミは道端に咲く小さな黄色い花ですが、葉の形が特徴的で、家紋にも使われています。片喰という漢字もあり、家紋としてはこちらが使われます。クローバーのような葉なので、誤解されていることもあります。片喰は荒地や畑に群生する繁殖力の強い雑草の一種で、子孫繁栄を意味するとも云われています。日本十大紋の一つで桐紋についで広く愛用されており、山陰、北陸地方に多い紋とされています。新田氏、長宗我部氏、徳川時代には松平氏、酒井氏、森川氏など多くの武家で使用されました。また公家では冷泉家、入江家、花山院家などが用いたそうです。そしていろいろな変化形があり、単純な三つ葉の他に四葉もあり、剣片喰のような変形、菱や丸を加えたもの、五瓜、亀甲、藤輪を加えたもの、松や蝶のように変形したもの、さらにそれらの組み合わせなど、実に多くのバリエーションがあります。それだけ重宝されたデザインということもできます。散歩の折に、片喰を見つけたら、家紋のことを思い出してみるのも風流かもしれません。啓蟄の時期の食べ物としては、ワラビやゼンマイのような山菜や蛤(はまぐり)などの海産物も出てきます。野菜としては菜の花や新玉ねぎも出てきます。いろいろな春の料理を楽しめる、良い季節です。

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