処暑



2025年の処暑は、8月23日(土曜日)にあたります。二十四節気の第14に位置し、暦のうえで「暑さがやや落ち着き始める時期」とされる節目です。「処暑」という語は、「処(止まる・とどまる)」と「暑(暑さ)」から成り、猛暑のなかにもようやく「暑さが少しずつ落ち着いてきたな」と感じられる時期を象徴しています。太陽が黄経150度の位置に達した瞬間が処暑であり、これは毎年8月22日~23日頃にあたります。この日は単に一日の「節目」だけでなく、処暑から次の節気・白露(しらつゆ)前日(9月6日頃)までを含む約15日間の期間を指すこともあります。暦便覧(江戸時代の解説書)では「陽気とどまりて、はじめて退きやまんとすれば也」と記され、夏の極みにあって徐々に移ろう気配を詩情豊かに表現しています。処暑の期間は下記のように七十二候で刻まれ、自然界の細やかな変化が言葉で紡がれています。

初候:綿柎開(わたのはなしべひらく)(8月23日頃~)
綿の花が弾けて綿毛をのぞかせる。綿の花は実際に見たことのある人は少ないのではないでしょうか。昔は綿花栽培が盛んで綿織物が普及していましたが、今はほとんど輸入ですから、綿花も見なくなりました。

次候:天地始粛(てんちはじめてさむし)(約8月28日頃~)
天も地も「粛(つつし)む」、身が引き締まるような涼しさが感じられる季節。「つつしむ」には「慎む」という漢字もありますが、粛の方は「つつしむ、いましめる、しずかにする、すみやかにする」等々です。「慎む」は一般に知られている方の意味で、「とことん用心して、注意深く物事を進める」の意味になります。

末候:禾乃登(こくものすなわちみのる)(9月2日頃~)
稲をはじめとした穀倉が実り始める秋の訪れ。「禾」は稲・粟・麦などの穀物の総称を指し、穂の形から名付けられた象形文字です。「登」は「熟」「登熟」を意味し、穀物が実り始める様子を表します。漢字の素養が必要ですね。今は英語の知識が必須ですが、昔は漢字や漢籍の知識が教養人の必須でした。それで明治時代に作られた英語などの日本語訳がすべて漢字で作られ、今日まで使われています。

七十二候はいずれも、体感としてはわずかな変化でも、自然が確実に季節を進行させている証です。処暑を迎えても、日中の暑さや残暑が厳しいのが現実ですが、それでも朝夕に吹く風や虫の声、空の表情には徐々に“秋の兆し”が交じります。「夏の疲れをこの時期に癒やし、収穫期を迎える準備を」といった自然への心づかいは、古来から変わらぬ知恵です。
伝統行事としては、関西の地蔵盆(8月23日前後)や、山梨県の吉田の火祭り(8月26・27日)などが処暑のころに行われ、地元の風土や人々の暮らしとの響きを感じさせてくれます。現代でも「処暑の候」などの季節の挨拶に使われ、俳句の季語としても秋の入り口を表す語です。気候の面では、台風の襲来「特異日」とされるこの時期は、自然災害への備えも大切です。心と体を切り替える季節の節目として、夏の疲れを癒やし、実りの秋への期待を豊かに育む時間でもあります。

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