手話の雑学33


手話で話す女性のイラスト

ネアンデルタール人は旧人類とはいわれていても、人類には違いありません。道具の使用や埋葬の習慣があった、ということでもあるので、言語の使用があったことが推定されていたのですが、実は音声言語は現代人とは異なっており、あったとしても非常に「原始的」である、ということになります。チンパンジーや類人猿の音声と似ていた、という推定もできるので、類人猿の音声と旧人類の音声の違い、とくに言語という側面から考えると、「言語は人間という種に固有」という説の根拠が怪しくなってきます。この説を守るためには、「言語は音声言語とは限らない」という説をとらざると得ません。また類人猿は「手話ができる」という主張する動物学者も多くでてきました。チンパンジーについていえば、人間の子供と同じように育てても、音声言語は獲得できなかった、という報告がある一方で、同じ環境で手話は獲得できた、という報告が1970年代に相次ぎました。同時に「手話は言語である」という主張が広く認められるようになったという時代背景と重なり、「手話言語が音声言語に先行した」という「言語進化説」が出てきました。つまり、言語の起源として、それまでは

①ワンワン説:
初期の言葉は獣や鳥の鳴き声の模倣である。

②プープー説:
最初の言葉は、苦痛、歓喜、驚愕など感情的な叫び・発声に由来する。

③ドンドン説:
音響から自然物に関する語が出来た。

④エイヤコーラ説(よいとまけ説):
集団でのリズミカルな労働、そのかけ声などから行動に関する語が出来た。

⑤タータ説:
身体の動きと口・唇の動きの連動(身体動作に付随する無意味な発声)を言語の起源とする。“ta-ta”は「バイバイ!」の意味。

⑥ラララ説:
イェスペルセンの説。遊び、笑い、求愛など情緒的な行動に伴ったある程度長い音楽的な発声が、言語の起源である。

というように、あくまでも音声言語の起源についての推測です。このようにいろいろな説がでているということは「定説がない」ということでもあります。また、言語学会はこういう議論に意味はない、として、言語起源論を封印する動きもありました。それにも関わらず、言語の起源を追求する人々から、新たに「手話起源説」がでてきました。手話が身振りから進化したことは確かですから、身振り→手話→音声言語と発達したと考えるわけです。その証拠としては、旧人類は音声器官が未発達であったが、手の動きは自由であったこと、それは二足歩行と関係があること、同時に脳の容積が増大していったこと、などは化石からわかります脳の増大が言語と関係が深いことは想像できます。人間の脳科学は、言語を司る機能がどの位置にあるのか、研究を進めています。

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