手話の雑学48

日本手話学習は日本語で習うため、学習者のほとんどが日本手話と日本語の近さを感じるかもしれませんが、文法的に見ると、日本手話は英語に近い側面が多いのです。まずは数を通じて、それを実感してください。ある意味、英文法に強い人は日本手話文法理解も早いと思われます。
数の次は「人称」という概念です。英文法の時間に「人称代名詞」というのを習い、1人称、2人称、3人称というのを習いました。1,2,3という数字があるため、わかりにくいのですが、1人称は「話し手」、2人称は「聞き手」、3人称は「それ以外」と理解すると、ややわかりやすくなります。日本語には人称概念はほぼありません。人称代名詞は英語の時間にならうので、「私」が1人称、「あなた」が2人称、「彼、彼女」が3人称と思っています。英語の時間はそれでよいのですが、日本語では1人称を表す語は「私、俺、おいら、あたい、我、余、朕、拙者、愚僧」など数多くの「名詞」があります。つまり代名詞ではなく名詞であり、人称と同時に「社会的身分」が表示される、という言語です。彼、彼女もhe,sheだけでなく、恋人の意味が強く、実際そういう用法が一般的になっています。同じく「あの人、あの子、あの娘、あいつ」など多くの3人称を示す名詞が日本語にはあります。これは欧米の言語にはない特徴です。
英語の3人称代名詞であるhe,sheは性別があります。日本手話では、彼や彼女という性別を示すこともあれば、人として中性を示すこともあります。男性は親指、女性は小指、中性は人差し指で表現します。性別をどの語にするのか、というルールは未解決ですが、「医者」や「通勤」では男女が表示されます。「行く」は通常は中性ですが、男女を示すこともあります。
英語ではitのように性別のない代名詞がありますが、モノに対してだけであり、日本手話では人にも中性があります。この点では、日本手話は英語に近いとはいえ、英語とも異なる面もあるわけです。日本手話では、話し手である1人称と聞き手である2人称は、空間と目線で表示されます。手話は対面で行われるのが基本なので、話し手はつねに自分であり、聞き手はつねに相手です。
人称は「受け身」と関わってきます。受け身というと英語の受動態の感覚があるかもしれませんが、日本語では「れる」「られる」のような助動詞で表します。英語では、「主語と目的語を入れ替えて、be動詞を入れて、動詞を過去分詞にして、元の主語の前にbyを付ける」というややこしい操作が必要でした。つまり言語によって、受け身の形はさまざまです。日本手話では、「手話する」「手話される」のように、運動方向を逆転することで示されます。「説明する」「説明される」のように、直訳が可能な場合もありますが、「報告する」の運動方向を逆にした「報告される」は日本語として変です。「報告をもらう」と訳すべきです。問題は、「レポート」のような場合、日本語では「レポートを出してください」という場合に、手話では「レポートをもらう、お願いします」のような表現になります。ここでは「受け身」という観念はありません。
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