手話の雑学110

次に量子観測とナラティブ手話分析の関係を考えてみます。こちらは 「時間の中で意味が立ち上がる」という点で、上記よりさらに手話向きになります。
③ 量子観測 と ナラティブ手話分析
まず、意味は「存在する」のではなく、「起こる」ものという理解が必要です。
出発点として、量子観測のもう一つの核心として、ハイゼンベルク以後の量子力学が突き当たったのは、この直観です。「粒子は観測されるまで確定した状態をもっていない。」そして「観測前には、状態は重ね合わさっている。」という問題です。観測という出来事が起きた瞬間に、一つの現実として立ち上がる、ということです。ここで重要なのは、「見たから分かった」ではなく、「見たことで、そうなった」という点です。
これをナラティブ手話に重ねて考えると、ナラティブ手話(物語手話・談話手話など)でも、意味は最初から一意に決まっているわけではありません。観測前の手話(=重ね合わさった状態)では
・指示対象がまだ固定されていない
・視点(誰の視点か)が揺れている
・行為者と語り手が切り替わり得る
・時間が「いま/過去/想像」で重なっている
この段階の手話は、複数の意味可能性を同時に含んだ状態です。
手話分析にとって観測とは何かを考えると、ここでいう「観測」は、実験装置ではありません。
・観察者(分析者・聞き手)が
・どこで
・何を
・どの理論枠で切り取るか
これが、意味を収束させる出来事になります。
たとえば、
・グロス化する
・「この語は○○だ」と命名する
・主語を補って日本語訳する
この瞬間、ナラティブ手話の多義的状態は一つの読みへと崩壊(収束)します。
これは誤読ではなく、観測による意味の確定です。わかりやすく言えば、意味は最初から存在しているわけではない、という理解が重要です。
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