ワイナリー巡り

十三夜の月のイラスト

ワイナリーは単独のこともありますが、ほとんどは1つの村のようになっていて、多くのワイナリーが点在していて、それぞれ独自の味と雰囲気があります。またテイスティングがあり、そこでおつまみとなるパンやチーズや燻製、酢漬けなどが提供されるのも魅力です。

ワイナリーの多くがシャトーという名前がついていますが、「シャトー(Château)」という名前がワイナリーに多いのは、フランスの貴族文化や土地所有制度との関係が深いからです。ただし、ワイン文化そのものを育てたのは中世の修道院であり、両者は歴史の中でゆるやかにつながっています。「Château」はフランス語で「城」「館」「領主の館」を意味します。特にボルドー地方では、葡萄畑を含む大地主の館全体を指す言葉として使われるようになりました。つまり、本来の意味では「ワイン蔵」ではなく、「葡萄畑付きの領地」なのです。たとえば、世界的に有名なChâteau Margaux、Château Lafite Rothschild、Château Mouton Rothschildなどは、もともと貴族や大地主の館を中心に形成された葡萄園でした。

中世ヨーロッパでは、広大な土地を持つのは貴族か教会でした。特に修道院は重要で、ワインはミサに必要だったため、修道士たちは葡萄栽培と醸造技術を非常に発達させました。現在でもワインラベルに「荘園」「館」「修道院」のイメージが強く残っていることです。消費者にとって「シャトー」という語は、単に建物ではなく、歴史、伝統、土地性、格式、長い熟成文化を連想させます。そのため、実際には城ではなくても、世界各地のワイナリーが「Château」を名乗るようになりました。カリフォルニアでも、フランス風の権威を演出するためにシャトー風建築を作る例があります。ワイナリーを訪れると、単なる「酒工場」というより、小さな王国や宗教施設のような雰囲気を感じることがあります。静かな石造りの建物、地下セラー、長い並木道――あれは偶然ではなく、中世ヨーロッパの権力と信仰の記憶を、そのまま引きずっている風景なのです。

有名な「ドン・ペリニヨン(Dom Pérignon)」の“Dom”は、ラテン語の Dominus(主人・師)に由来し、フランスでは修道士への敬称として使われました。つまり「ドン・ペリニヨン」とは、「ペリニヨン修道士」という意味に近いのです。この名の由来となったのが、17世紀のベネディクト会修道士Dom Pierre Pérignonです。彼はシャンパーニュ地方のオーヴィレール修道院で、葡萄畑とワイン管理を担当していました。ただし、「ドン・ペリニヨンがシャンパンを発明した」という有名な話は、かなり神話化されています。

ワイナリーは互いに距離があるので、巡りをするには自動車が不可欠です。しかし一方では飲酒運転は禁止されています。今はツアーの形が一般的ですが、それだと自由がきかないのが難点です。昔のアメリカは飲酒運転にはおおらかで、ワイナリー巡りをしていると、同じような集団に出会います。そうすると、そこでテイスティングしながら品評会のような臨時パーティとなり、楽しくなります。のんべえというのは世界共通のようです。ある時、「ワインの試飲は脱水運動(dehydrating sport)だ」という人がいて、妙に納得しました。飲酒して、水を飲んで運転して、というのは不謹慎ですが、スポーツに似てなくもない疲労感があります。

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