Good Friday



2022年4月15日はGood Fridayです。日本語では聖金曜日と訳されています。この日を知っているのはキリスト教徒かキリスト教文化についての知識がある方です。簡単にいえばイエス・キリストの亡くなった日です。そして三日後の日曜日に復活します。金曜日から日曜日までの3日間が復活祭(イースター)で、キリスト教徒にとってはクリスマスと同様あるいはそれ以上の意味がある日です。しかしクリスマスのような陽気なお祝いではないこと、日程が毎年変わること、春には行事が多い時期なので日本では習慣化していません。命日だからかもしれませんが、涅槃会もあまり習慣化していません。それでも商業化の試みは毎年でてきています。そうした風習については日曜日に解説します。
この金曜日にイエスは処刑され弟子には復活を予言して昇天するのですが、それを受難と呼びます。英語でPassionというのですが日本ではパッションというと情熱の意味しか教えないので、誤解している人が多いです。原義はヘブライ語の「過ぎ越し」から来ており、過越祭はユダヤ教のpassoverとして英語にも残っています。ギリシア正教などの正教派ではパスパと呼んでいます。英語でEasterというのはゲルマン神話の春の女神「Eostre」(エスター、エオストレ)と春の月名「Eostremonat」(エオストレモナト)に由来し春祭りの意味を持っています。イースターも春祭りと関りがあり、新芽の成長などを愛でる心は日本の二十四節気の清明と同じです。
復活祭は年によって日付が変わる移動祝日で基本的に「春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」と定められており、逆算してその直前の金曜日が受難の聖金曜日になります。つまりグレゴリオ暦ではなく太陽太陰暦を使っています。このコラムでも旧暦の話がよく出ますが、似たような感じです。聖金曜日はしめやかな行事がほとんどで宗派によっては断食をします。また普段は行われるミサもないことがあります。音楽では「マタイの受難曲」という有名な曲はごぞんじの方も多いと思いますが、実は作曲家はバッハだけではありません。ハレルヤコーラスと同じで、宗教曲は同じテーマで何人もの作曲家が作曲することが多いです。絵画でもいろいろな作品があります。受難や受胎告知などは西洋美術では欠かすことのできないテーマですので、事前に勉強しておくと時代背景や作者の思いがわかります。マタイとはマタイによる福音書のことで、他の福音書にも受難の物語が書かれており、マルコ、ルカ、ヨハネによる福音書にもそれぞれ記述があります。最後の晩餐やユダの裏切りもこの中の話です。
金曜日が不吉な日とされているのは受難の話が前提ですが、その処刑場への道への階段が13段であったから13が不吉な数字というのは俗説のようで、最後の晩餐の出席者が13人だったから、とか諸説あります。13日の金曜日は映画で有名になりましたが、不吉な金曜日と13を結び付けようとしたプロパガンダのようです。
復活祭は実はこの3日間だけでなく、イースターからの1週間が休日なので今年は4月22日までがイースター・ホリデイです。またイースターの前の46日間を四旬節(受苦節)(Lent)といい、敬虔なキリスト教徒はイエスの受難と死を思い返し、悔い改め、試練・修養・祈りの時として過ごす期間です。イエスが40日間荒野で断食をしたことに因み、この期間は肉・卵・乳製品・油などを断ち、祈りに励むのですが、イースター期間を含めているので実質が40日間となっています。これだけ見てもキリスト教徒にとってクリスマスよりも重要な行事であることがわかります。

受難

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