ムーミンの日は2つある



語呂合わせで6月3日をムーミンの日としているのは日本だけだそうです。それはそうでしょうね、語呂合わせは日本でしか通用しませんから。世界的にはムーミン生誕60周年となる2005年に「全世界で通用する記念日」という目的で作者であるトーベ・ヤンソン氏の誕生日である8月9日になっています。ある意味、それほど日本にはムーミンファンが多く、なぜか日本人の心をつかんでいます。「ムーミンバレーパーク」というテーマパークが埼玉県飯能市にあります。
原作者のトーベ・ヤンソンはフィンランド人ですが、ウイキペディアによるとフィンランド人による人気投票では1位ではなく19位で、上位が日本人の知らない政治家や軍人なのはいたしかたないとして、平均的な日本人が知っている名前としては作曲家のシベリウスが8位、スキージャンプのニッカネンが11位でヤンソンはその下ということになります。
そもそも日本ではフィンランドについてよく知らないし誤解も多いです。漠然と北欧の国で、福祉が進んでいて、ノキアなどITも進んでおり、ロバニエミというサンタクロースの街があって、最近ではNATOに参加申請をしたということでしょうか。そしてフィンランドといえばサウナが有名でスオミという名前を知っている人もいるでしょう。NATO参加申請もフィンランドとスウェーデンというのも偶然ではなく、フィンランド内にスウェーデン人もいてスウェーデン語を話す人も多いのです。学校でもスウェーデン語が外国語学習の筆頭になっています。日本で漠然と北欧と考えている地域は現地ではノルディック・カウンシルといい、5カ国3地域が参加しています。国はスウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、アイスランドで、地域としてはグリーンランドとフェロー諸島がデンマーク王国構成国として、オーランド諸島がフィンランド領となっています。今でもデンマークとフィンランドは領土をもっています。そしてノルディックの中でもスウェーデン、デンマーク、ノルウェーの3カ国をスカンジナビアといいます。なぜかというと言語がスカンジナビア諸語という親戚のような言語だからです。アイスランドはスカンジナビア諸語も含まれるゲルマン語族なのですが島でもあり孤立した形です。フィンランドはさらに別の言語で通称はフィンランド語と言いますが、フィン語またはスオミ語というウラル語族です。ウラル語族には隣国のエストニア語などがあり、ノルディックの中でも独自の言語です。
日本には北欧の福祉をうらやむ人が多いですが、これはないものねだりというか、ノルディック諸国の政策は日本とは正反対の制度であることをまず知らねばなりません。まず高負担です。所得の半分が税金です。そして税金は国税でなくほとんど地方分配されます。完全に地方自治主体で国が管理するのは軍と宗教です。ノルディック諸国の国旗には横長の十字がありますが、ルーテル派のプロテスタントが国民の9割を占め、教会は教会税によって運営されます。国立教会なわけです。教育や医療などはすべて地方税で運営されます。一方で移民の流入を厳しく制限しています。移民を受け入れ教育し自国民にするわけですから、教育できる範囲でしか受け入れません。難民はお客様ではなく国民になるように教育します。当然、言語教育もきちんとし、まず自国語、そして隣国の言語と英語の教育をします。言語は生活のためでもあり外交や科学のための重要な道具です。そして防衛のための軍は必要であり徴兵制があります。職業に男女の差別はないのですが、軍人だけは男子が徴兵制、女子は志願制となっています。養子縁組も盛んで移民の子供を受け入れることも多く、自分の子供と一緒に育てます。これは出生率が低下しても国民が減らないようにするためです。国民であることは血統ではなく言語と宗教と思想を共有していることであり、混血が当たり前の歴史があります。なぜこのような国家ができたかは紙幅が足りないのでまたの機会に。ムーミンの誕生はこうした国家体制や歴史から生まれてきたものです。

フィンランド

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