質屋の日
7月8日は質屋の日だそうです。例によって語呂合わせです。シチヤと読むのは共通語で関東方言がベースになっているのですが、西日本ではヒチヤと訛るのが普通です。この訛りという考え方もそろそろ考え直したいです。言語学的には訛るというのは変化であって、地域的・歴史的に言語はつねに変化していくものなので、共通語そのものも変化していくと考えます。訛りというのは標準語という思想があり、標準からはずれている、という感覚です。場合によっては直さねばならない、という思想が背景にあります。「東京に出てきたら訛りが恥ずかしいから直す」という考えが今でも強いようですが、実は東京はいろいろな訛りの複合体で、標準語を話している人はいないと言ってよいです。いわゆる江戸の職人言葉が下町に残っていて、カッコいいという人もいますが、例外的でその下町の江戸言葉も今や落語にしか残っていません。テレビはとっくに方言の塊りで、タレントは自分の方言のまま話しています。ニュースアナウンサは訓練を受けて標準語で読んでいるはずですが、それでもたまに訛っていたり、インタビューやバラエティの時には標準語でないことが目立ちます。標準語という発想は明治時代の富国強兵政策として学校教育を通じて言語の共通化を図ったことが始まりです。軍は共通語を持っていないと不便であり、国民皆兵時代の基本政策です。そして今も国家的共通言語政策をしている国は少なからずあります。そして外国語教育は標準語教育にならざるをえないという宿命から逃れられません。そのため文語教育に偏らよらざるをえないので、口語である英会話教室が流行るという結果になっているのが日本の英語教育です。
さて質屋の話です。最近はリサイクル・ショップと名を変えていますが、機能はほぼ変わりません。違いは質草という物を担保にした金融という制度がなくなり、買い取りと再販が主になったということです。「初ガツオは女房を質に入れても食べた江戸っ子」といわれても何のことやらわからないでしょうね。今や初鰹という習慣もなく、むしろ脂の乗った戻り鰹が珍重され、女房を質に入れることは例えとしてもありえないです。落語に出てくる江戸や明治の頃でも、女房を質に入れることはありえず、通常は大切なもの、最悪は着物を質に入れて金を借りるのが通例です。大切なものなので、どうしても戻したいので、借りた金に利息を付けて返すことで担保を取り戻すというシステムだったのが、近代ではサラリーマン金融(サラ金)という給与を担保とした金融が広がり、質屋は衰退していきました。現代になると、クレジットカードという銀行預金を担保とした金融システムが普及し、誰もが気軽に利用するようになりました。戦前までは物を買うのに、その場で現金払いということは少なく、ツケ(帳面につけておくこと)で手に入れ、月末(晦日)や年末にまとめて支払うのが通例でした。その名残は今でもサブスクリプションやローンという形で残っています。いわば後払い方式ですが、これは昔の農民が庄屋から土地と種を借り、耕作してできた作物で年貢を納めるという制度と基本的な貸借関係は同じ構造です。庶民は先に物を手に入れていたのですから、take and giveの立場だったわけです。この関係に利息という制度が関わり、後払いには利息がつくので優劣関係ができてしまいます。昔も今も貸した側が儲かるという原理は少しも変わっていないのが金融ということです。
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