公然 overt
英語としては一般的な表現ですが、日本人は英語でovertという表現を使う人は稀です。発音の問題があるのかもしれませんし、overと似ているので誤解されやすい、ということもあるのかもしれません。逆にいえば、聞き取り間違いがあるのかもしれません。「公然と、あからさまな、あらわな、明示的」と訳されています。抽象的な概念ですので、実際の英語表現を見てみましょう。表現の例としては、an overt act(明白な行為)、an overt behavior (あらわな行動)、 an overt category(明示的範疇)、an overt conflict(目に見える紛争)、 an overt criticism (あからさまな非難)、an overt difference(目立った違い)、 an overt discrimination(あからさまな差別)などが挙げられます。後にくる名詞によって訳語が違うところが特徴的です。実は単純な概念なのですが、日本人にはややわかりにくいのかもしれません。ここにはでてきていませんが、「表にでている、露骨な」という訳もあります。日本文化では、何事も曖昧にして、はっきり言わないことが多いため、表にでているとしても、みないフリをしたり、陰であれこれ言うことがよく行われます。その点、欧米文化では、表にでていることは、はっきりと言います。それがovertな現象ということです。もう少し正確に言うと、overtは単に表にでているということよりは、「露骨」という訳語が示すように、感情的なニュアンスが多少加わっています。
同じように「あきらかな」ことを表す英語にはclear(曖昧さがない)Obvious(誰が見ても明白な)Apparent(視覚的に明らかな)evident(客観的事実な根拠によって明らかな)plain(単調で分かりやすく明らかな)explicit(明示的な、はっきりした)などの類義語があります。英語にはこうした意味の微妙な違いにより、語彙が分かれていることを「分化」といいますが、語彙分化はその言語の文化、関心の強さを示すとされています。たとえば英語ならriceと1語なのに対し、日本語では「稲、籾、米、飯、コメ、ライス」など細かく分化しているのは、日本文化が米に拘りが強い証しです。それぞれの違いは日本語話者なら区別できます。
英語でも時々、誤用があるのがovertとexplicitです。Overtは例えば、ある行動や状況が他の人に対して隠されていないことを指します。つまり、公然と行われていることを表します。それに対しexplicitには強い言葉 、暴力的、身体的・精神的虐待に関連する、性行為に関連する、差別的な言葉、のような要素が含まれます。例えば、洋楽の曲名に「(Explicit)」や「(Clean)」と括弧つきで表示されていることがあります。これは、メディアで流す際の規制に合わせて編集されたバージョンと、オリジナルのバージョンを区別するためです。「Clean (クリーン)」は編集や再録音などを行い、メディア規制に引っかからないようにしたものです。overtは公然と見えることを指し、explicitは不適切な表現が使われていることを示します。要するにovertは公然と見えることを指しexplicitは不適切な表現が使われていることを示します。いかがでしょうか。
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