言語技能測定技術と言語教育理論⑧ 転記時間
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手話技能検定試験では、独自の試験方法を採っていることがいくつかあります。その1つが転記時間です。6級から3級までの試験では「ビデオを見る」「選択肢をマークカードに記す」という回答手段を採っています。マークカードにマークする、という作業は、小さい楕円形のマルを鉛筆で塗りつぶすという作業なので、けっこう集中力がいる上に、時間がかかります。試験問題はビデオで示されるので、そちらにも集中しないといけません。この2つの作業を同時に行うのは不可能なので、「ビデオを見ながら、回答を問題用紙に書いておく」という方法をお勧めしています。問題用紙には選択肢の番号が印刷されているので、とりあえず、そこにマルをしておけばよいわけです。そしてビデオ問題提示が終わった段階で、問題用紙の回答をマークカードに転記する時間があるので、必要ならば、回答の修正もそこでできます。マークカードの塗りつぶしは、プラスチック消しゴムであれば、消して、別の回答に変更することもできるのですが、実際には消し方がむずかしく、不完全な消し方では、「二重回答」になってしまいます。現実にはそういう例がかなり多いため、「試験対策」としては、転記の時に、慎重に塗りつぶすことです。そうした時間的余裕のため、転記時間はかなり長めにとるような配慮もしています。最近は、そういう方はほとんどなくなりましたが、以前は、自分はきちんと回答したのに、不合格になった、というクレームをする方がいました。マークカードを検証してみると、消し方が悪く、鉛筆の種類によっては、濃淡の差がほとんどなく、二重回答になっている場合がほとんどでした。受験者本人は「訂正したつもり」でも、実際は二重回答と判断されたわけです。それも1問くらいであれば、合否に影響することはまずないのですが、そういう方にかぎって、二重回答とされた問題が数多くあり、結果的に不合格となったわけです。言い換えると、理解力がまだ合格点に達していないということでもあり、選択肢問題であることを考えると、もう少し学習すべき、ということになります。入試のような試験であれば、人生がかかっている、といっても過言ではないでしょうが、手話検定は実力測定試験ですし、年2回あるので、学習を積んで再挑戦することに意味があると考えられます。入試のように、イチかバチか、とか運を天に任せて、という要素はなく、学習成果の測定が目的なので、資格試験とも異なります。そのためには、安定的な試験であることが重要なため、試験問題作成には慎重を期しています。ただ、ビデオ映像提示については、テクノロジーの進化が速く、ビデオテープ、DVDと規格も変わり、デバイス(装置)も変化しています。近年は動画配信も出てきています。その都度、画質も変わり、画角も変わりました。録画装置、提示装置などへの投資も必要になります。そうした時代的変化にも対応しつつ、設計思想を維持していくには、かなりの努力を要します。一見、単純そうな試験制度の裏側には、いろいろな背景と努力があったことをご理解いただければ幸いです。
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