雨水の候


コラム挿絵:二十四節気・雨水のイメージ

「雨水(うすい)」と聞くと、「春が近くなってきた」と思うのは、昔の人に近づいているから、かもしれません。あるいは女の子がいる家では、そろそろお雛様を出さなきゃ。と思う時期です。雨水とは、雪が雨へと変わって降り注ぎ、降り積もった雪や氷もとけて水になる頃という意味です。二十四節気の1つで、雨水の前が立春、雨水の後は啓蟄(けいちつ)となります。雨水の頃は、実際にはまだ雪深い地域もありますが、厳しい寒さが和らぎ暖かな雨が降ることで、雪解けが始まる頃です。雪の多い地域では、雪崩が起きやすいので、注意が必要になってきます。それまで凍っていた大地がゆるんで目覚め、草木が芽生える時期というイメージなので、春の始めというより、冬の終わり、というのが実感でしょう。雨水になると雪解け水で土が潤い始めるため、農耕の準備を始める目安とされました。雪解け水が、小さな流れとなり、山から里に下りてきて、田んぼに水が入り始めます。この清らかな清水で作ったお米は格別においしいとされ、神米や寺米などの奉納米を作るための神田(かんだ)や寺田(てらだ)は、山のふもとの清水が最初に受けられる場所に作られてきました。そして、こうした神聖な田の下流に一般の田を作りました。このように水や米は古くから神聖なものであり、その二次製品である、酒もまた神聖なものでした。今も神社や仏殿に米や酒をお供えするのは、そういう精神性という文化の伝承です。そのお下がりを自宅の神棚や仏壇にお供えするのも文化であり伝統です。広い意味では宗教行事ではありますが、信仰と言うよりも習俗であり、人々の心の支えでもあり、生活の糧にもなっていました。そうした習俗がだんだん薄れていくのは時代の流れでもありますが、その分、精神性も薄れていきますから、人々の心が不安定になるのも自然なことです。雨水のような二十四節気という昔の暦で季節感を先取りし、決められた行事を行っていることが幸福感につながるのではないか、と思う人が老人に多いのは、人生経験の深さに比例しているのでしょう。雪解け水が小さな流れを作っていく様を人生に重ねることができるかもしれません。雨水の頃の気候変動はよく、「三寒四温」といいます。文字とおり、寒い日が三日続いて、その後、暖かい日が4日続く、という繰り返しがあり、次第に寒い日が遠のいていきます。そして、低気圧と高気圧の変動で、強い風が吹くことがあります。それが春一番です。気象庁には春一番の定義があります。地域によって少し異なりますが、関東地方の定義は、①立春(2月4日ごろ)から春分(3月21日ごろ)までの間、②日本海に低気圧がある、③最大風速秒速8m以上、西南西~東南東の風、前日より気温が高い、ということだそうです。今は気象庁様が桜の開花や梅雨入り、梅雨明けを宣言してお決めになります。お上は自然よりお偉いのです。テレビやラジオなどのマスコミは気象庁様の配下の予報士様方ですから、当然、言いなりです。しかし、予報が外れて、雨が降らなかったり、降ったりしても責任はとっていただけません。やはり庶民は自力で季節を味わうしかありませんね。

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