アノマリー


コラム挿絵:木星探査機のイラスト

パイオニア・アノマリーというのをごぞんじでしょうか。ご存じでしたら、よほどの天文好きです。1972年3月2日に米国のケープカナベラル空軍基地第36発射施設からアトラス・セントールロケットにて打ち上げられたのがパイオニア10号という木星探査機です。1973年12月4日に、木星へ約20万キロメートルまで最接近し、木星やその衛星の画像を送信するとともに、木星の強大な磁気圏やヴァン・アレン帯の観測を行いました。パイオニア10号からの送信は打ち上げから約30年間に渡って確認され、2003年1月23日に最後の信号が地球に送られて終了しました。パイオニア10号は、およそ天王星の軌道を越えたあたりから、理論的に予測されていたよりも非常にわずかながら「減速」をしていることが1980年に判明し、以後パイオニア11号や、その他の太陽系の外縁部に向かった探査機にも見出され、「パイオニア・アノマリー」と呼ばれるようになりました。減速の原因については長らくはっきりせず、外部からの未知の力、探査機の内部要因、軌道分析プログラムの誤りなどさまざまな可能性が検討されてきたものの、2012年探査機に搭載された原子力電池の放熱に偏りがあり、熱放射によって予期せぬ推進力が生まれた事が原因であると確定しました。パイオニア・アノマリーを訳してパイオニア異常、パイオニア変則事象といった用語が使われてきました。アノマリーという用語はいろいろな分野で使われています。科学的常識、原則からは説明できない逸脱、偏差を起こした現象を意味します。すでに説明できるようになった現象でも、アノマリーあるいは異常という名称がそのまま使われている場合もあります。パイオニア・アノマリーのように、天文学にはアノマリーが多いのですが、未知のことが多く、理論通りにはいかないことがたくさんあるようです。数学や物理学のような論理的な学問分野にもアノマリーは数多くあります。生物学や経済学のように、生の動きを対象とする分野は当然、理論通りにはならず、理論化されていない経験知が多く存在します。株式市場いわゆる相場には、こうしたアノマリーが定説化して存在しています。「節分天井、彼岸底」(年明けから上昇してきた相場が2月初旬に天井となり、3月初めの時期までは下げやすいことを現した格言。江戸時代から言われている)。「戎天井、天神底」(大阪市北浜で言われる格言。1月にえびす神社で十日戎が開催される時期に相場が高値をつけやすく、7月に大阪天満宮で天神祭が開催される時期に相場が底値を付けやすいことを現す格言)「5月に売り抜けろ」「感謝祭で買って新年に売れ」

(ウォール街で言われているアノマリー)「年末ラリー」「夏枯れ相場」(年末は節税のために含み損の株式を売却することが多く、株価が下がりやすくなり、8月は夏季休暇で市場に参加する投資家が減り需給が鈍くなると言われている)「サザエさん効果」(日曜夜のテレビアニメ『サザエさん』の視聴率が景気と連動しているという大和総研による調査報告)など、この業界にはいろいろな「伝説」があり、それを英語圏ではアノマリーと呼んでいるようです。

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