手話の雑学65

ふたたび、あのややこしい日本手話文法の話に戻ります。先週の日本手話文法の説明がむずかしかったのですが、これが日本手話学のエッセンスです。ご理解いただけたでしょうか。なかなか一度の説明ではむずかしいでしょうから、何度も読み返してみて、語幹、項、内蔵項という概念を順番に理解してください。
日本手話動詞の基本構造がわかると、動詞の分類は項の数で分類できます。「会う」は2項、「歩く」は1項です。この項の数という概念は現代言語学では重要です。学校で習った英語文法では、「直接目的語」や「間接目的語」という概念が不要になります。英文法の時間に「五文型」というのがあって、1.SV 2.SVC 3.SVO 4.SVOO 5.SVOCに分類できる、というのは言語学的にはシンプルで美しい法則ですが、みなさんには何のことだか意味がわからなかったと思います。ここで、Sが主語、Vが動詞、Oが目的語、Cが補語という用語を何となく覚えたかもしれません。とくに補語とは何だろう、という疑問のままの方も多いのではないでしょうか。その詳しい議論は英文法の解説に任せるとして、Vだけ詞で、あとは語というのも不統一ですね。これは文法カテゴリが異なるからです。主語や目的語になるのが「名詞」、補語になるのが「名詞または形容詞」という前提があります。そして動詞には「自動詞と他動詞」があります。「自動詞は目的語をとらない動詞」「他動詞は目的語をとる動詞」と定義されています。英語では他動詞の中に、1つだけ目的語をとるタイプ、2つとるタイプがあります。それが文型3と4の違いです。補語というのは目的語ではなく、自動詞につく名詞や形容詞のことです。ここがややこしいですね。名詞は主語や目的語になるだけでなく、補語にもなります。このようにいろいろな文法があるのをまとめると五文型になる、ということなのですが、あまりに抽象的な議論が重なるので、理解がなかなかわかりません。しかし五文型がわかっていることで、語学には役立ちました。全部の英文の単文をこの5つのタイプに分けて、それぞれの文型に従って、単語を入れ替えて練習すると効率がよさそうです。これが文型(sentence pattern)による練習法パタン・プラクティスです。この練習法は今でも部分的に採用されていて、英会話学習の基本形です。英語の時間に、まずI am a boy.やThis is a pen.を習った理由はどちらも第1文型SV型だからです。謎が1つ解けましたか?ついでに最後のSVOC型の解説もしておきます。例文はI saw him running.です。この文は、実は2つの内容が重なってできています。I saw him.とHe is running.です。日本語に訳すと「彼が走っているのを(私は)見た」となります。日本語では「の」によって、文が重なっていることを表現しています。このように文法の構造を知ると、成人にはわかりやすく説明できるのですが、中学や高校の受験英語は超特急促成英語教育ですから、いちいち説明せず「とにかく覚えなさい」という記憶学習型に詰め込んでしまうので、記憶力による学習差が顕著になります。
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