冬土用の入り


十三夜の月のイラスト

冬土用の入りは立春を迎えるための「静かな助走」です。暦の上では「冬土用の入り」を迎えます。土用と聞くと、夏の土用丑の日を思い浮かべる方が多いと思いますが、土用は年に四回あります。立春・立夏・立秋・立冬、それぞれの日の直前、約十八~十九日間が土用とされ、その季節から次の季節へと移るための調整期間です。冬土用は、立春を控えた旧暦一年最後の土用であり、寒さの底から新しい循環へと向かう、いわば「静かな助走」の時期といえます。ちなみに今年は新暦の2月19日が旧暦の師走朔日となります。冬土用の入りは、外の世界は最も寒く、雪や霜が厳しく、自然は活動を止めたかのように見えます。しかし、土用という言葉が示すとおり、この時期の主役は「土」です。五行思想では、土は季節と季節をつなぐ存在であり、変化を受け止め、次を生み出す基盤とされます。冬土用は、春という新しい始まりを支えるために、土が力を蓄える期間なのです。このため、土用には「土を動かすことを慎む」という考え方が伝えられてきました。家の基礎工事や庭の掘り返し、大きな模様替えなどは控えたほうがよいとされます。これは単なる迷信というより、季節の変わり目に無理をせず、環境や身体のバランスを乱さないための生活の知恵と見ることができます。特に冬土用は、寒さで体調を崩しやすい時期でもあり、内側を整えることが重視されてきました。

食の面でも、冬土用には意味があります。土用の食養生といえば夏の鰻が有名ですが、冬土用では根菜類や保存食が象徴的です。大根、にんじん、ごぼう、里芋など、土の中で育つ食材は、冷えた身体を内側から温め、基礎体力を支える存在です。発酵食品や乾物もまた、時間をかけて旨味を蓄えた食べ物として、土用の精神に通じています。また、冬土用は「一年を締めくくる内省の時間」としても捉えられてきました。外に向かって何かを始めるより、これまでの出来事を振り返り、不要なものを整理する時期です。掃除や片付けも、大きく動かすのではなく、静かに整えることが大切だとされます。心身を落ち着かせ、次の季節に向けて余白をつくる。冬土用は、そのための暦上の合図なのです。

立春は「春の始まり」といっても、実際にはまだ寒さが残ります。しかし、暦は自然の兆しを先取りして示します。冬土用の入りは、厳冬のただ中にあって、すでに春への準備が始まっていることを私たちに教えてくれます。何かを無理に始めなくてもよい。ただ、静かに整え、力を蓄える。それが冬土用の過ごし方です。

一年の終わりと始まりが重なるこの時期、冬土用の入りを意識することで、季節のリズムに身を委ねる感覚がよみがえります。動かないこと、待つこと、蓄えることもまた、大切な営みです。春を迎える前のこの静かな時間に、足元を確かめながら、新しい循環への準備を整えていきたいものです。

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