寒椿



この季節の花の中で目立つのは梅と椿ですね。椿は日本人好みなのか、いろいろな種類があります。中でもよく文芸作品や俳句に出てくるのが「侘助」という種類です。小ぶりの一重咲で、名前の由来について諸説があります。千利休が好んだということもあり、茶の湯のわびさびに通じることから、多くの文人の好みとなったようです。普通の椿のようにたくさん一度に咲くのではなく、寒中にぼつぼつと寂しげにうつむき加減の下向きに花が咲き、地味なところが日本人好みのようです。花言葉も「ひかえめ、質素、静かな趣」となっています。赤だけでなく、白や混じったものもあります。

侘助を始め、椿は桜のように花びらがはらはらと散るのではなく、花ごとポロっと落ちるので、武士が首を切られることを連想し嫌う人もいたようです。侘助の原産地は中国とも朝鮮半島ともいわれ、また茶ノ木との掛け合わせという説もあるようです。椿は漢音でチンとも読むので、古い中国との関わりは多いと思われます。海石榴と書いてツバキとも読みますが、これは隋の時代の皇帝煬帝の詩の中にこの表記が見られるそうで、意味は海外から渡ってきた石榴(ざくろ)ということなので、椿はもしかすると中国原産でないかもしれません。中国では椿のことを山茶というらしいので、椿と茶の花は別物である可能性もあります。ちなみに日本では山茶花と書いてサザンカと読みますが、これはサンサカが転化したものとされています。サザンカと椿は見るからに違うのですが、椿と茶と山茶花は同系統だそうです。茶の花は小さい白い花です。

椿を英語でCamelliaといいますが、起源はイエズス会修道士であったカメルがフィリピンから種をヨーロッパに持ち込んだものが広がり植物学者リンネがカメルにちなんでカメリアと命名したのだそうです。ちなみに資生堂のCIである花椿は島根の八重垣神社の夫婦椿をモチーフとしてデザインされたとか。2本が1つになった連理で夫婦仲を示します。

椿は寒中に咲くので寒椿という名もあり、こちらも文学や俳句によく出てきます。山口百恵の曲に「寒椿」という余り知られていない名曲があります。18歳の女性が歌ったにしては何とも妖艶な感じの曲で個人的に好きな曲です。

「椿姫」はヴェルディ作曲の有名なオペラで、ヴィオレッタという高級娼婦とジェルモンという青年貴族の恋物語です。「乾杯の歌」はどこかで聞かれたことがあると思います。なぜ椿姫というかというと、娼婦なので生理中は赤い椿、それ以外の日は白い椿を身に着けたからだそうです。椿姫は映画も何本もあり日本の舞台でも何度も再現されています。椿姫の物語をベースとした男性心理をカメリアンコンプレックスといい、不幸な女性を見るとつい救いたくなる男性心理だそうですが、昨今は逆もありそうですね。

寒椿

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