意訳と直訳


翻訳機

最近は辞書を見ながら、自分で翻訳することが減り、インターネットを利用して機械翻訳を利用することが増えました。実際に利用してみると、何か不自然で、意味も概略しかつかめません。それでも「ないよりはマシ」ということで、なにより即席で利用できるメリットがあるため、利用者が激増しています。言い換えると、利用者は手抜きでもいいから、すぐ使えることが重要という価値判断をしているといえます。情報を活用する人として、こういう姿勢でよいのか、はなはだ疑問です。時間が節約されるということはあるかもしれませんが、誤解の可能性も高いので、後からきちんと翻訳してみるという手間が本当は必要ですが、そうしている人はまずいないでしょうね。ということは、そういうあやふやな情報を元に自分の意見を発信していることになり、それを拡散している人はさらに無責任ということです。

直訳というのは、辞書を元に適用する文法(構文)を選択して、翻訳する方法です。辞書には語彙の意味として複数が載っているのが普通ですが、概ね使用頻度順になっています。学校時代に最初の語だけを取り出して、後は日本語から類推して訳文を作って誤訳になった経験はありませんか。実は現在のAIの翻訳はそれに近い手法をとっています。対象言語と目標言語の語ではなく、意味の最小単位である形態素を分析して形態素辞書を作り、それにより変換しているので、語対応の直訳よりは、語義のぶれが少ないのですが、それでも形態素が複数の意味をもつことは避けられないので、やはり語訳が発生します。ネット翻訳の中には語対応のままのものもあるので、当然翻訳精度は下がります。

標準的な英語辞書には見出し語の後に発音記号が書いてあり、次に語義が書いてあり、品詞、そして例文(用法)が書いてあります。実はここが一番重要で、対象言語の文章と似た構文なのかどうかを判定する必要があります。例文には当然、対象語の他に語が書いてあり、そこから文脈がわかります。翻訳ではこの文脈の理解が決め手です。

意訳というのは、翻訳者が勘で目標言語にしますから、意味は理解しやすくなります。一方で個人差が大きく、解釈の差が開きます。とくに該当する行動や文化がない場合は意訳でないと意味がつかめないことが普通です。文学では意訳が普通です。

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