統一できないもの
統一できないものは意外にたくさんあります。たとえば言語です。為政者はいつも言語統一を図ろうとしてきましたが、うまくいかなかったことが歴史的に証明されています。現在の日本でも政府がNHKなどが「標準語」として統一しようとしてきましたが、結局は「共通語」として普及させたにすぎず、それも最近はかなりくずれてきています。NHKが定めた「標準アクセント」ですらアナウンサというプロでも、「正しくない」アクセントが流通しています。現実の口語では、方言が未だに当たり前で、しかも堂々と使用されています。明治時代、富国強兵政策の一環として、軍隊用語の統一を目的に言語訓練をしたのですが、その際には特殊な用語を専門用語として使用することを強制しました。同様に花柳界でも特別な用語を用いることで、出身を隠す目的で「おいらんことば」が使用されました。これは現代でも、落語の世界で、東京落語は「職人風、武家風、田舎者風」の言い回しが使われ、上方落語でも同様な用語が使われています。これらをジャーゴンというのですが、ジャーゴンは特定の集団内の統一であり、社会全体、国家全体での統一にはなりません。宗教の世界では、神様の言葉であり、真実は1つでないといけませんから、言語統一が行われることがよくあります。キリスト教ではラテン語による統一によって聖書が成立しました。しかし宗教改革によって各国ごとに翻訳された聖書が普及し、言語の多様化が行われました。宗教の聖書は翻訳という過程が必須であり、また原著も弟子による行動記述が基本であるため、どうしても「ゆれ」や解釈の差がでてきます。いわゆる異本が多数存在します。どの異本を採用するかによって宗派が分かれたりします。しかしバラバラのままでは都合が悪いこともあるので、時々「共通化」が行われます。統一方向と分散方向が繰り返されるのが歴史です。
精神的なものも個人がベースになっているので、統一は無理ですが、生物的な要素は統一はさらに不可能です。人種を統一しようというナチスのような思想は特別として、全部白人にしたり、全部黒人にすることなど不可能なことは自明の理です。混血したものを純粋化することも不可能です。同様に男女差も統一はできません。現代で話題になっているLGBT問題も、よく考えると、LGBというのは性的嗜好の問題であり、広い意味では心の問題といえますが、肉体は男女のままです。いずれにせよ、統一することは不可能です。Tはトランスジェンダつまり性転換のことで、身体と心が異なるわけですから、LGBと一緒にすることはできません。これも個人的な問題ですから、社会全体をTに統一することは不可能で、個別的に社会が許容するかどうか、という問題です。また背が高い、低い、太っている、痩せているなどの身体的特徴も統一できません。昔の軍隊では「服に体を合わせろ」などと乱暴なことを言っていた、と笑い話にしますが、今でも標準体重とか、赤ちゃんの成長とか、平均に合わせようとすることがよくあります。統一しようとまでは考えていないのですが、同じようにしようとする思想には共通点があります。
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