信用と信頼


信用と信頼

よく混同されるのが信用と信頼です。英語における信頼と信用の違いは「信頼」がtrust, reliance, confidence, faithであるのに対し、「信用」はcredit, credenceとなっていることです。日本でも当たり前になったクレジット・カードは訳せば信用券ないし信用状です。要するに「このカードを持っている人はちゃんとお金を払いますよ」ということを示しているわけです。商取引ではきちんと支払いをしてくれるかどうかが重要なことですから、その保証をしているのが信用状です。「きちんと支払うことは当たり前」と思っているのは日本人の特徴かもしれません。諸外国では物を買っておきながら払ってくれない、ことはよくあることといわざるをえません。また支払っても物を送ってくれない、こともしばしば起きます。「当然のこと」が実行されないのが世の中というのが諸外国の「常識」です。当然のことがきちんと実行されていれば、揉め事などほとんどありません。それがないから、世界のあちこちで紛争が起こるのです。

当然のことが必ず実行される、と信用できることが「信頼」です。信頼は信用が前提になっています。そこで「依存できる」relianceとか「確信がもてる」confidenceあるいは「誠実」faithという表現があるわけです。一種の依存関係があるわけなので、Trust me.は「私を信用して」といつも訳すのは間違いで、状況によって「私に預けて」「私に任せて」と訳すのが妥当です。「あなたのことは信用しているが、全部任せるわけにはいかない」場合を信頼とはいわないのです。「信頼を裏切る」ことは「信用を裏切る」より重大な意味を持ちます。

ある解説によると「「信用」は、過去の実績など信じるに値する材料が必要ですが、「信頼」は判断できる材料が必ずしもあるとはかぎらない。「信用」は、相手の実績を判断して評価するという、一方通行的なものになります。一方、「信頼」は、相手の能力や人柄を信じて頼りにするという、人と人の気持ちのつながりによって生まれる双方向的な関係です。「信用」は、過去に対し、実績や成果を評価すること。「信頼」は、未来の行動や感情について、期待すること。結論として、「信用」とは過去を、「信頼」とは未来を指します。」としています。この解説は欧米流のような印象を受けます。日本人が相手を信用する場合、過去の実績などを材料とするでしょうか。日本では学歴や縁故、紹介などが重要な要素になります。過去の実績を重視するのは金融機関の融資くらいです。学歴が過去の実績と考えるのは日本の他にはアメリカくらいで、ほとんどの国ではそれほど学歴を信用の材料にはしていません。実際、偽の学歴や金で買うことができる場合も多く、大学入学にも縁故が多いのも事実です。日本のような公平、公正な試験による入試は例外的と考えるべきです。それゆえに信用と信頼が似たような概念になり、混同が起きるのもうなづけます。日本では似たような概念でも、I believe in you. (信用)I rely on you.(信頼)ではニュアンスが違います。I trust you.はその意味では曖昧なニュアンスを残しています。

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