ひそかに covert


covert

公然overtの対語がcovertです。語源的にはフランス語のcovertで、対語ではないのですが、英語的に語形が似ていて、意味が対比的なため、英語圏では対語と思われています。日本人の立場からすると、語源はともなく、音が似ているので、対語として覚えるのが便利かもしれません。Covertは「秘密の、隠された、内密の、こっそりした」という意味の形容詞です。狩の獲物が隠れている下生えや藪などの隠れ場所を表す名詞としても使われます。covertは公然と見たり認めたりしないことを意味します。同じく英文の例を見てみると、covert negotiation(秘密交渉)、covert effort(隠れた努力)、covert message(隠されたメッセージ)、covert surveillance(隠密調査) covert design (潜在図案)、North Korean covert operations boats(北朝鮮の秘密工作船)といった例が見つかります。一般用語というよりは、工業や政治の専門用語として出てくることが多いようです。時々「不可視的invisible」という意味でも使われます。日本語としては、「秘密」というより「隠密」という方がぴったりくるかもしれません。秘密だとsecretとの違いが曖昧なので、使い方を間違えやすいです。

英語の綴りが似ているのでcoverと読み間違えると、微妙な誤解が生じます。カバーは何かが上にかかっていることですが、covertはそのカバーの下にある、ということなので、状況が似ていなくもないです。発音の場合は、coverはカバー、covertはコウバートなので、日本人の耳でも聞き間違えることはまずありません。

日本文化では、こういう表に出さない、秘めた思い、ということが多いと思います。表に出してしまうとうまく伝わらないので、心に秘めておいて、自然ににじみ出る部分をゆっくりとわかってほしい、というような伝え方が好まれていると思われます。以心伝心というのは、正にそういうことではないでしょうか。「そういうことではないでしょうか」と言う表現がそれこそ曖昧です。「そう」とは何か、「いう」は誰が言うのか、「ではない」は否定語、「でしょう」は推測、「か」は疑問です。何かをはっきりせず、否定と推測と疑問が重なった感情ですから、これを英語で表現するのは困難です。アメリカならRight?と一言で終わりです。文章にしても、Is that true?くらいでしょう。その場合でも、相手に念を押す意味なので、相手はRight. とかTrue.と答えますが、日本語では答えは不要です。むしろ答えると違和感があります。せいぜい黙ってうなづく程度です。つまり日本語と日本文化では、主語や目的語は曖昧のまま、結論も明確にしないで、「空気感」で同調してくれることを期待します。英語や欧米文化では、逆で、主語や目的語を明確にし、結論を肯定か否定で明確に示すことが必要です。日本文化は世界的には少数派なので、covert        な表現や行動が好まれますが、多数派はovertに表現することが理解につながります。この文化差を理解し、それに対応する行動をしないと、いくら英語が上手になっても伝わりません。

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