一般意味論 5


テレビ演説

S. I. ハヤカワは「地図と現地」という概念の他にpurr wordsと snarl wordsという彼独自の用語を導入しています。どちらも馴染みの薄い英単語ですが、purrは猫がゴロゴロと喉を鳴らすことで、 snarlは犬が歯をむき出してうなることです。ハヤカワはpurr wordsを好きなものへの反応、反対に嫌いなものへの反応をsnarl wordsと呼びました。具体的には社会的な現象に対する言語的な反応のことです。「そのような声明は、私たちの内的世界の状態を不注意に報告することよりも、外的世界を報告することとは関係がありません。それらは、人間が唸り、喉を鳴らすのと同等です。銃規制、中絶、死刑、選挙などの問題により、私たちはしばしば唸り声や喉鳴りに相当する言葉に頼るようになります。そのような判断的な方法で表現されたそのような問題に賛成することは、コミュニケーションを頑固な無能さのレベルに減らすことです。」そして、その主題についての私たちの気持ち を伝えたいという衝動は、意味のある議論を促進するのではなく、実際には「判断をやめる」かもしれないと早川は言います。「そのような声明は、私たちの内的世界の状態を不注意に報告することよりも、外的世界を報告することとは関係がありません。それらは、人間が唸り、喉を鳴らすのと同等です。銃規制、中絶、死刑、選挙などの問題により、私たちはしばしば唸り声や喉鳴りに相当する言葉に頼るようになります。そのような判断的な方法で表現されたそのような問題に賛成することは、コミュニケーションを頑固な無能さのレベルに減らすことです。」ちょっと表現がわかりにくいのですが、要するに、いろいろな社会問題に対して、耳障りのよい心地のよい表現に引っ張られ、反対に嫌な表現をされると嫌いになる、といった反応のことです。つまり自分の価値判断ではなく、他人の価値判断による言語表現に左右されやすい、という指摘です。当時はテレビがそれほど普及していなかったので、新聞やラジオによるプロパガンダを想定しての分析ですが、その後、テレビが普及して、その言語効果はさらに強くなりました。テレビの表現を盲信する人は多く、実際、アメリカ大統領選においてテレビ演説が当落を決めたこともあります。またその大統領が反対にテレビでスキャンダルを暴露されることで辞任に追い込まれたという歴史もあります。現代ではSNSという新たなメディアが普及したことで、言語メディアの影響力はさらに強くなりました。実際、影響者(インフルエンサー)という一個人の発言が大きな影響を与えています。この言語効果は政治的な影響力だけでなく、芸能人の人気や商品の宣伝まで左右するようになっています。さらに仮想現実(VR)という世界が急激に拡大し、メタバース空間が現実との境界を曖昧にしているので、言語や記号による現実の行動を支配する力はさらに増してきていると思われます。ハヤカワはその後、初めての日系上院議員となって政治の世界に行ったので、言語学者としての業績はほぼなくなっていますが、著作は名著となって残っており、現代社会の言語的諸問題にも当てはまることが多くなってきました。

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